2709/1000 桑江公園(沖縄県北谷町)

2021/04/19

沖縄県 身近な公園 展望台 北谷町

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沖縄県北谷町は、沖縄戦当時に米軍の上陸地点となり、そこから約1年半の間は町域全体が米軍に接収されました。
それから70年以上が経ち少しずつ返還が進んでいるのですが、いまも町面積の52パーセントが米軍用地で、嘉手納飛行場、キャンプ桑江(レスター)、キャンプ瑞慶覧(フォスター)、陸軍貯油施設という4つの米軍基地が存在します。
QAB琉球朝日放送のサイトから引用、公園名を加筆
https://www.qab.co.jp/news/2016021077373.html

いまの土地利用をわかりやすく示す図がQAB琉球朝日放送のサイトにあったので引用・加工させていただくと上図のようになっています。
白いところが米軍基地、赤いところが返還地。海沿いの灰色は基地を避けて埋め立てた区域にあたりますので、上で「町面積の52%」と書きましたが、もともとの町域からすると基地の面積比率はさらに高まります。
そんな北谷町にある桑江公園(1984年開設)、宇地原公園(1994年開園)、謝苅公園(2003年開園)になんとなく共通点を感じたので、3つ続きで記事にします。

さて、桑江公園。
方言でいえば「クェー」と呼ばれた集落名から採られた公園名です。図書館や生涯学習センター、体育館などに隣接しており北谷町の公共施設群の一角を占めています。

丘と谷の地形を取り込んだ敷地になっており、図書館などに近いところが丘上の平坦地なのですが、その中でもポコっと飛び出たところに展望台が建てられています。

丘の上に登ると逆光気味になってしまいましたが、それほど高いわけでもない丘の上に、そこそこの2階建の展望台なので、それほど大きなものではありません。

周りの樹木が大きくなって見晴らしが悪くなっているものの、展望台の上まで行くと500メートルほど離れた街がよく見えます。
ただ、よくある展望台ほども高くないので、海や山など遠くの絶景が望めるほどではありません。

では何のための展望台なのだろうと考えてみるに、米軍に奪われたままの故郷を眺めるためのものではないかと思い当たりました。
以前にも那覇市のNo.319 赤嶺緑地で、基地の中に取り込まれてしまった村の拝所を拝むためのスペースを見たことがあるのでそこからの発想なのですが、そう悪い想像ではないように思います。

その想像をうっすらと後押ししてくれるヒントが、展望台のある丘からずっと下がった谷底にありました。
谷底にあたる部分には池があり、庭園風に仕立てられています。

上流部は谷になっているので、小さいながらも集水域があって雨水が集まってくるのでしょうか。

その池からガケの方にむかって橋が架かっています。渡った先にガケと拝所しか無いのにしては立派な橋です。

この拝所がヒントです。
各地のものが合祀されたタイプなのですが、横に建つ案内板によれば、以前は基地内にあったものを数年前に移設してきたものなのです。
祖先崇拝の信仰が強い沖縄では、家々の直接の先祖のお墓とともに、集落に縁のある祖先神を大切にしますので、その場所にお参りできないというのは一大事です。
米軍もその事情については最低限は汲んでいて、年に数回程度は基地内の拝所への参拝が許されることがあるのですが(もちろん先人たちの粘り強い交渉の結果です)、本来の参拝のペースはそんなものではないので、基地内から公園へと移設してきたものだと思われます。

■現地の案内板より「旧字桑江御願所」
「旧字桑江御願所」は、戦前旧字桑江集落に複数所在していた拝所で、安全、健康祈願、五穀豊穣、豊年祭、年中祭祀などを祈願するところです。
戦後の土地接収・開発等により移動を余儀なくされ、拝所をまとめた合祀所が、基地内に所在していました。
桑江公園内には北谷城の大川按司に由来する拝所「竹山御嶽」が所在しており、その隣に「旧字桑江御願所」を再移設することになりました。
「旧字桑江御願所」は、町内はもとより他地域からの参拝者も多数おり、拝所の祈願を通じて旧字桑江集落の歴史・文化の普及が行え、さらに人と人との繋がりを果たす役割に寄与する場所となることを願っております。
平成30年7月吉日 設置管理者:旧字桑江郷友会

そんな事情を考えると、何十年もの間、この展望台から故地を眺めていた人たちのことを勝手に想像してしまうわけです。

そのほかに園内にはイベントスペースとなる大きな広場や、複合遊具や健康器具の並ぶ遊具広場などがあるのですが、そんな諸々はさておいて、展望台こそがこの公園の本質だと(勝手に)思ってしまった桑江公園でした。

(2021年2月訪問)

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