神戸市東灘区を流れる新田川(しんでんがわ)は、石屋川水系の上流部のひとつで、No.2771 渦森台公園の付近から流れ出し、渦森台、鴨子ケ原の山麓住宅地の横を約2.5kmの距離を流れて、石屋川に合流します。
この新田川が、御影山手の住宅地横に出てくるところに大仏堰堤、大仏第2堰堤という2つの砂防ダムがあり、これの間の区間の河川敷が親水広場になっています。正式名称はわからないので、とりあえずタイトルの通りの呼び名で。
『神戸市小字名集』には、旧西平野村、旧高羽村の両方に重複するものとして「大仏ケ平」という小字が収録されており、これから採られたであろう大仏堰堤(砂防ダム)。
これが実は、No.3920 鴨子が原公園の最後に登場した細道を下りてきた先で、橋の向こうの斜面林を上っていくと、すぐにNo.3920があります。
表六甲河川特有の急流には、街を守るために無数の砂防ダムが作られているのですが、砂防ダムと住宅地との距離が近いというのも特徴で、これまでにもNo.2792 焼ヶ原北公園やNo.3851 こしきいわ銀水橋公園など、砂防ダムのすぐ横に設けられた都市公園を訪ねてきました。
しかしここは、河川敷や砂防ダムそのものが公園化されているという点で、それらとは少し異なります。
と言っても、そんなに色々あるわけではないのですが、御影山手側に一つだけある階段から河川敷に下りると、まずご近所の皆さんが育てている市民花壇。
そして、高水敷部分は軽く緑化されていて小広場に、階段で下りられる低水敷部分は石張りで固められて、水が少ない時はここに下りて歩き回れるようになっています。
あちこちに飛石や腰掛石のようなものが置かれており、のんびり座ったり、子供が軽く水遊びをしたりもできます。
砂防ダムの上流側なので、もう少し砂が溜まっていても良さそうなものですが、舗装面が広く見えていて、けっこうスッキリしています。
こちらが第2堰堤。スリット堰堤と呼ばれるタイプで、日常時には従来の砂防ダムよりも多く砂が通るので自然環境への影響を抑えることができ、それでいて大雨の時には土石流や流木を捕らえることができます。
水通しの下部に岩が積み上げられているのは、おそらく防災的な意味はなく、親水広場の続きで、ここに上って遊べということでしょう。
こちらの第2堰堤の完成は1996年(平成8年)で、ちょうど河川や砂防の事業が「もっと自然や人にも配慮したものに」転換するように動いていた時期なので、そんな背景の元に、この空間がつくられたのではないかと考えてみます。
とは言え、昨今はゲリラ豪雨が増えているので、遊ぶ時には天気やサイレンに気をつけないといけません。
でもここで、親水広場よりも面白いと思ったのは、砂防ダムの直上に橋が架かっていることです。ほかでは見たことがありませんし、実際に例は多くないように思います。
砂防ダムの建造は1942年(昭和17年)、上に載っている大仏橋は1972年(昭和47年)ということなので、ダムを造ってから30年後に、鴨子ケ原と御影山手の両住宅地の開発が進んだことで橋が必要になり、国交省のダムの上に神戸市の橋を乗っけたものと思われます。
既存の砂防ダムの上に橋台を継ぎ足しており、歩道橋なので構造計算はそれほど大変ではなかったかも知れませんが、行政財産の管理として考えればけっこう面倒くさい事業を実現したものです。
これは上流側の第2堰堤ですが、最近の砂防ダムはこのように、堤体上部の天端には入れないことが多いので、砂防ダムの上を歩けるだけで少し嬉しくなります。
ちなみに大仏堰堤の高さは14メートルもあるからか、下流側(下写真で左側)だけ手すりが高くなっています。右側の親水広場側も5~6メートルは高低差があるのですが、危険性については差があるという判断でしょうか。
晴れた日には眺めも美しい、大仏砂防ダムの親水広場でした。
(2025年5月訪問)
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