2018年1月25日

1695/1000 やよいの風公園(福岡市西区)

やよいの風公園は、フルネームでは「国史跡吉武高木(よしたけたかぎ)遺跡 やよいの風公園」という史跡公園です。


室見川の西岸にあたるこの付近では、旧石器時代から中世にわたる幾つもの遺跡が残っており「吉武遺跡群」と呼ばれています。中でもこの吉武高木遺跡は、弥生時代の甕棺墓(かめかんぼ)が多数見つかったことで有名で、また後の三種の神器(八咫鏡・八尺瓊勾玉・草薙剣)にも思想的に通じると考えられる銅鏡、ヒスイの勾玉、銅剣がセットになった副葬品が見つかったことでも知られています。
ちなみに空間的には国史跡ですが、副葬品については周辺遺跡から出土したものも合わせて「筑前吉武遺跡出土品」として国重文になっています。

公園の敷地はおおむね一辺150メートルくらいの正方形に近い形をしており、真ん中を東西方向に流れる用水路によって、南北に区切られています。この敷地形状は遺跡とは関係なく、農地として整備された区画を市が買収する際の都合によるものと思われます。
水路を挟んで北側が甕棺墓を目玉にしたブロック、南側が大型建物や「最古の王墓」を目玉にしたブロックになっています。

甕棺とは、呼んで字のごとく甕の形をした棺で、埋葬専用に作られた大型の土器のことです。学問的には時代・場所・形状などで色々分類されるのでしょうが、詳しいことは知りません。
これを使って埋葬されたお墓が甕棺墓。北部九州で多く見つかっています。

甕棺の展示で目立っているのは、こちらの「トレンチウォール」。
トレンチというのは遺跡の発掘調査手法の一つで、遺跡内に一定の幅の溝を掘り、その範囲で調査を行なうものです。広い遺跡の中で限られた場所をサンプルとして調査し、効率的に遺跡の状況を確認できるというメリットがあります。
そのトレンチをそのまま地上に持ち上げてきたようなトレンチウォールにより、調査手法を模式的に表現しつつ、甕棺墓を立体的に見せるという工夫がされています。
■現地の解説板より「トレンチウォールの見方」
トレンチウォールは、甕棺が埋まっている地下の様子を地上に取り出して、横から観察できるようにした実物大の模型です。

トレンチウォールで見る甕棺の立体模型。天井部分が地表を表しているおり、甕棺の大きさ、地下に埋まっている深さなどを実感することができます。

こちらは、甕棺のカットモデル。甕棺の中に埋葬された遺骸の状況を示しています。
膝を曲げて屈葬され、周りには副葬品も一緒に収められていたようです。

平面的に図示しているトレンチウォールもあります。ちなみにこれは上記の立体模型の裏側なのですが、「甕棺の外装にも色々あるんだな~」ということがわかる仕掛けになっています。

トレンチウォールの周りには、平面表示もあります。みな同じ大きさなので、これは瓶感が見つかった場所の表現で、大きさを示しているわけではないのでしょう。
また御影石の色が違うのは、たぶん見つかった甕棺のタイプの違いを示しているのだろうと思います。

資料によれば、吉武高木遺跡では弥生時代前期末~中期後半の甕棺墓が34基見つかっており、その中には成人用の大きなものと小児用の小さなもののがあったそうです。
ただ現地の解説板を見ると、甕棺のマークは34基よりも沢山付いているので、数え方として甕棺数=甕棺墓数ではない(1基の甕棺墓は、複数の甕棺で構成される場合がある)のかも知れません。

そして、敷地中央を流れる用水路を渡ると、南側は「特定集団墓」と呼ばれる大きな墓や、大型建物跡の展示があるブロックになります。

北側の甕棺墓と比べると、南側の「特定集団墓」は整然と一定のルールで並べられ、区画を区切られていることから、このエリアでも上位・支配的な地位にあった人たちの墓だと考えられるそうです。
ただ、こちらは甕棺墓の展示と比べると、少々わかりにくい展示になっています。
というのも、遺構が公園の周りを通る道路部分にはみ出しているというか、道路部分を史跡公園に含めて整備し直すことができなかったようで、展示を見ながら想像力を働かせないといけません。

現地のマップを再掲すると、この点線の中で土色になっているのが上の写真に写っている範囲です。本当に展示したい内容の1/3くらいしか展示できていないということになります。

いつか道路を廃止して公園区域が拡大する日を夢見て、できるところまで頑張ったということはわかるのですが...
せめて道路に区画を示すペイントくらいはできなかったのでしょうか。

さらにはみ出しているのが、弥生時代中期後半としては最大級だという14×13メートルの規模がある掘立柱建物跡。
公園内にはほぼ入っていないため、敷地内にある盛土山「大型建物展望地」から眺めることになります。

公園の横に広がる、この一見なにもない空地を...

この透明なガイド表示越しに眺めると...

あら不思議(でもないけれど)、大型建物の姿が現れました。
No.1399 でも見かけた展示手法です。No.1399では目標物が少なくて画像を重ねにくかったのですが、ここは直線的な道路があるので、かなりピッタリと合わせることができます。

無料の史跡公園ですが、広々とした眺めの良い敷地に、色々と趣向を凝らした展示があって楽しめる、やよいの風公園。
いつの日か、もう少し区域が拡大できることを祈ります。

(2017年9月訪問)


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