3933/1000 カリンバ自然公園とカリンバ遺跡(北海道恵庭市)

2025/05/13

恵庭市 史跡 身近な公園 北海道

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カリンバと聞くとアフリカの民族楽器のことを思い出しますが、ここではアイヌ語で「サクラの樹皮」という意味を持つ地名、そこで見つかった遺跡の話です。

北海道白老町の『広報げんき 2023年(令和5年)5月号』掲載の「知っておこうアイヌ文化-カリンパニ」によると、

北海道の一般的なサクラであるエゾヤマザクラを調べてみると、カリンパニやカルンパニなどと記載されています。カリンパニは、カリンパ=サクラの樹皮、ニ=木という語源が由来であり、(中略)アイヌ語の植物名の多くは、人間の暮らしに欠かせない部位の名称が由来になっているといいます。

とあります。つまり、アイヌにとっては繊維素材などに使えるサクラの樹皮の方が花よりもずっと重要であり、「カリンパという素材が取れる樹」という名付け方法だったようです。
なお、アイヌ語では「パ」と「バ」が似た発音になることがあるため、カタカナ表記ではカリンバとカリンパが混在しています。

ということで、恵庭市の遺跡は、国史跡としての指定名称はカリンバ遺跡。ですが、スマホのフォントだとカリンバもカリンパもあまり見分けがつきません。
旧カリンバ川沿いの低地と、そのそばの段丘面に広がり、縄文時代からアイヌ文化期(約3,500~2,500年前)の土坑墓群と生活跡が見つかっており、遺跡は2005年(平成17年)に国史跡、遺物はその翌年に重要文化財に指定されています。

しかし現状は、解説板以外にこれといった史跡整備はされておらず、低地は湿地林として、段丘面は原っぱとして現状保存されているため、聞かないことには遺跡だとわからない状態です。

解説板も、交通量の多い交差点の角に唐突に建てられており、目の前の景色との繋がりが、今ひとつわかりにくいように思います。

■現地の解説板より「国指定史跡 カリンバ遺跡」

内容:縄文時代後期~晚期(約3,500~2,500年前)の土坑墓群と生活跡
指定面積:42,614平米
指定年月日:平成17年3月2日
概要:カリンバ遺跡は、縄文時代から近世にかけて残された遺跡です。団地中央通りの発掘調査と周辺の分布調査で、段丘面から墓(土坑墓)が多数みつかりました。なかでも合葬墓(遺体を二人以上埋葬した墓)から副葬品が大量に出土し、クシ、ウデワ、髪飾り、飾り帯などの漆製品、玉・勾玉、サメの歯など多くの装身具がみつかりました。縄文時代後期の終わりから晩期の初めころの独特な埋葬習慣と、さまざまな漆塗りの装身具や玉などに縄文時代の人々の豊かな心を感じることができます。北側の低地面(林のなか)からは漆塗りのウデワ、玉、台石、土器、石器などといっしょに、食料やモノをたくわえる貯蔵穴、建物の跡と考えられる柱の穴、焚火の跡などの生活跡がみつかっています。

どちらかと言えば、原っぱよりもこの低湿地の林として保全されている区域の方が、「ここに遺跡が埋まっているのだよ」と言われれば、そうなのかな、と思ってしまう雰囲気があります。北海道の原風景っぽさがあるからでしょうか。

でも、今のところ判明している遺跡の主要部は、段丘上(原っぱ)のお墓ですから、そちらの方に解説板が建てられるのは仕方がないこと。
とは言え、人里離れたところにお墓だけがポツンとあることは少ないので、いつか調査が進めば、この林の中に集落跡が見つかるかも知れません。

文章にしてもわかりにくいので、恵庭市発行のパンフレット『史跡カリンバ遺跡』から、改めて区域図を引用。最初の方で見ていたのが左下の段丘面、沼地になっているのが左上の低地面というあたりです。

史跡カリンバ遺跡(北海道恵庭市教育委員会)より

そして、上図で右上部分、国史跡の区域には含まれないものの、旧カリンバ川の低地面としては一連と言える区域が、カリンバ自然公園という名の都市公園になっています。

余談として、このブログは主に都市公園を訪ねているのですが、日本には都市公園法と自然公園法という別々の法律があって、それぞれ対象とするものが違っています。
だから、制度上の都市公園なのに名称に自然公園と付けることは止めてほしい気持ちもあるのですが、「都市内にあって自然環境をよく残している公園」としてはわかりやすい名称でもあり、悩ましいところです。

「自然」を楽しめる施設は、園内の9割方を占める保存樹林・湿地です。歩けるのは木道だけで、それも樹林地の半分ほどの範囲しか通っていませんので、自然保護の色が濃いめだと言えます。
史跡区域についてもこれくらいの見学ルートは整備して、「遺跡を保存しているという現状」を見せて欲しいようには思うのですが、史跡区域内で何かしらの整備をするには、文化財保護法に基づく諸々の計画や手続きに時間がかかることも知っているので、あまり強くは言えません。

川の名前はカリンバですが、サクラは湿地を嫌う樹種なので、この場所には見当たりません。
木道上に落ち葉があるものしか分かりませんが、樹木はハルニレやヤチダモなど、北方の落葉樹が多いように思います。

園内には、ハルニレを使った柱が展示されており、この保存樹林もしくは遺跡にとってハルニレがとても重要なものであることは伝わってきます。

とくに解説がないので詳しくはわかりませんが、単にハルニレの成長の程度を示しているものか、あるいは遺跡からハルニレ材を使った遺物が出土したのか。

ミズバショウの群生が見られるという解説板もありましたが、訪ねたのはボチボチと雪虫も飛び始める10月終わりだったので、花はまったく見られませんでした。

木道から東へ出ると、公園の残り1割ほどを占める園地があります。
駐車場、トイレ、大型遊具等があるのですが、訪ねた時は遊具の工事中で、園地の広い範囲が立入禁止になっていました。

もしかすると、この工事で新しいものに入れ替えられているかも知れませんが、園内看板によれば、どことなく古代住居のようなデザインの複合遊具がある(あった)ようです。

いつかここで、楽器の方のカリンバコンサートを開催していただきたい、カリンバ自然公園とカリンバ遺跡でした。

(2024年10月訪問)

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