3571/1000 気仙沼市復興祈念公園(宮城県気仙沼市)

2024/03/11

気仙沼市 宮城県 自然災害伝承碑 東日本大震災後に整備された公園

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宮城県気仙沼市では、東日本大震災によって約1.6万棟の住宅が被害を受け、1,400人以上の方が亡くなりました。

この犠牲者を悼み、震災の記憶を後世に伝え、未来の安寧を祈念する場所として整備されたのが気仙沼市復興祈念公園で、2021年(令和3年)3月11日、震災から10年を迎える節目の日に開園しました。

場所は気仙沼市街地のやや東、陣山(じんやま)と呼ばれる小丘陵の頂上付近にあり、津波の被害が大きかった気仙沼港や内湾地区を始め四方に向けて見晴らしがよく、そして二度と津波にさらされない場所が選ばれています。

■現地の案内板より「気仙沼市復興祈念公園」
気仙沼市復興祈念公園は、2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災により犠牲となられた方を悼み、震災の記憶を後世に伝え、震災からの復興の様子を眼前に、未来の安寧を祈念する場所です。
この公園から望める場所は、震災当時、大津波や津波火災により壊滅的な被害を受け、深刻な地盤沈下が発生するとともに、大型漁船の打ち揚げの状況が世界中のメディアに取り上げられるなど、まさに「千年に一度の災害」を世界中が目の当たりにした場所でした。
公園内には、モニュメント・祈りの帆~セイル~、犧牲者銘板、寄附者銘板、伝承彫刻などを設置しています。
また、化石、史跡が現存し、希少な植物が自生するほか、天然記念物の動物が姿を見せるなど、公園自体も楽しめる自然公園です。

階段をずっと上っていき、頂上の主要部。左手に犠牲者らの名を刻む銘板、右手には休憩所、その奥に白いモニュメント・祈りの帆~セイル~、ところどころに伝承彫刻が配置されているという構造です。

まず銘板。市内各地の広い範囲で被害があったことから、亡くなられた方がお住まいだった方角に向けて手を合わせられるよう、円形に配置されています。

円形ということは、津波は海近くの南側の地区だけではなく、川を遡上して山裾の地区にまで被害を及ぼしたことを表しています。
こちらが山の北側、鹿折地区の様子。津波火災で大きな被害を受けました。

こちらは休憩所。座ると、おおむね気仙沼湾の湾口の方向を眺めることになります。
津波の被害を受けた人たちにとって、それがきた海の方向を眺めることは気持ちの上で落ち着かないかも知れませんが、三陸に住み続けるということは、海と折り合いを付けながら生きるということでもあろうかと考えます。

そして、樹々に囲まれ、2枚の大きなアルミ板を組み合わせたような形のモニュメント。
祈念公園のコンペを経て選ばれたトータル監修者が、他の応募作品にあった船の帆、灯台、合掌、橋、扉などのアイディアも融合させて、さらにクラウドファウンディングで費用を集め、気仙沼市内の造船会社の技術を活かして作られたものだそうです。
そういうストーリーを聞くと、監修者はじめ関係者の皆さんが、気仙沼市民にとっての復興祈念公園やシンボルモニュメントの存在意義を深く考えていたことが伝わってきます。

部屋の中、と言うほども明確に外部と区切られているわけではないのですが、2枚の板の間が小部屋のようになっており、ガラス製の献花台の向こうに、気仙沼湾を望みます。

そして、周りには何体かの伝承彫刻が置かれています。
これらは単なる彫刻ではなく、ひとつひとつが東日本大震災で起きた様々なエピソードに基づくものになっており、それを知る人には記憶の呼び水となり、知らない人には記憶を伝える縁となる、というものです。

台座の部分にQRコードが付けられていて、訪れた人はそこからエピソードを読むことができるようになっています。

色々な人の意見や気持ちを集めつつ、とても良くできた公園だと思うのですが、でも少しだけ気になったことも書き留めておきます。
というのは、駐車場からモニュメントや銘板がある頂上までは20メートルほどの高低差があり、歩行者専用の階段かスロープで向かうことになります。階段なら、この角度で50メートルほど、スロープは当然傾斜は緩いのですが渦巻き状に250メートルほど上らないといけないので、どちらにしてもそこそこ大変です。

上述の通り、この場所が持つ意味はよく理解するものの、だんだん遺族の方々も高齢化していく中では、ちょっと大変なのも事実です。

沖縄戦の慰霊碑は実際に合祀・統廃合が進んでいますし、阪神・淡路大震災の慰霊碑でも街なかへの移設が議論された例もあるのですが、せっかくできたものなので大切にしながら、でもいつかはスロープの大改良なども考える必要があるかも知れない気仙沼市復興祈念公園でした。

(2023年10月訪問)

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