江東区の川南(せんなん)公園は、関東大震災からの復興事業でつくられた復興小公園の一つで、その大きな特徴である小学校との一体化が、今も保たれています。
もっとも繋ぎ目の門は小さく、元々は公園中央を南北に貫く軸線がそのまま小学校に突き抜ける形になっていたものが、後の時代に下写真左手の学校プールが公園にはみ出して建設されたために、このような形になってしまったものと思われます。
開園当時の姿を残している物件としては、コンクリート製の滑り台があります。
ハシゴ部は明らかに後世の改造が入っていますが、本体部分は約100年前の姿を残しているものと思われます(建造当時の資料を見たわけではありませんが)。
2ハシゴ・1デッキ・2滑り部という構造で、滑り部がハの字型に開いた形状そのものは、現代の公園遊具でも見かけるスタイルです。
違っているのは全体がコンクリート造だという点で、とくに中央のデッキを支える柱の重厚さは、今の遊具には見られないものです。
これは柱部に付けられた銅板レリーフ。
ギリシャやローマの神話のキューピッドとキリスト教の天使は、外観に似たところがありますが、矢を射ることで恋情を引き起こすキューピッドは弓矢を持っており、神が地上に天罰を与える時に前触れの合図をする天使は角笛を持っています。
であれば、このレリーフはキューピッドと天使の混成部隊ということになりますが、その辺の意図は作者に聞いてみないとわかりません。
こちらはデッキ外壁のレリーフ。輪になって遊んでいるのは、羽がないから人間の子供でしょう。
作りとしてはコンクリート製の基盤の上に、漆喰製のものを付け足しているように見えます。約100年前から屋外の剥き出しの場所に設置されているとは思えないほど状態が良いので、もしかすると途中で大きな修繕や取替がされているかも知れません。
この滑り台は表裏がはっきりしており、裏面にはレリーフがないし、それがないから柱も細いものが2本になっています。表と比べると、のっぺりとした印象ですが、本来の遊具はこんなものです。
デッキ上部も、とくに装飾などはないシンプル構造です。
滑り部はツルツルで、決して文化財ではない現役遊具としてよく使われている様子が見て取れます。
とは言え、最新遊具と比べると見劣りするところもありますので、そこの遊び欲は、こちらの複合遊具やターザン遊具で満たすことになります。
4連ブランコ、揺れる動物遊具、砂場などの一般的な遊具もしっかりと充実しています。
それら遊具の横にある小段は、震災復興小公園の特徴であるパーゴラの名残だと思うのですが、今は上部構造が取り外されて、古代寺院の基壇跡のような状態になっています。
長い間に色々あったけど、今日も健やかな川南公園でした。
(2023年4月訪問)
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