鳥取市街地から西へ8kmほど離れたところにある吉岡温泉は、平安時代に開湯されたと伝えられる古湯で、いまも共同浴場や10軒ほどの温泉旅館が並びます。
決して繁華な温泉街ではありませんが、細い川の両側に小さな宿が並ぶ姿は、なんとも言えぬ味わいがあります。
この吉岡温泉に秋葉権現が祀られている小山があり、ここが秋葉公園です。
公園と言ってもほぼ山で、道に沿って登っていくと、薬師堂、寸風反古塚、山の名前にもなっている秋葉権現などが次々に登場して、最後は頂上に展望台があります。
でもその前に、登山口というか、公園エントランスのすぐ横に、人工の滝が作られています。今は水が流れていませんが。
この施設については、ガラス繊維強化セメント(GRC)が使われていることがポイントのようで、丁寧な解説板が付けられていました。

■現地の解説板より「GRC人工岩」
公園に作られた岩は、セメントと珪砂に耐アルカリガラスを混入したガラス繊維強化セメント(GRC)の岩です。ガラス繊維を入れると、厚さ30mm程度の薄くて強い板状の岩のパネルが出来ます。本物の岩盤から写した型を使って、工場で製作したGRCの岩のパネルを組み合わせて公園の岩山が造られました。(平成8年12月:鳥取県鳥取地方農林振興局/施工:有限会社森本組/擬岩工事:能登高分子工業株式会社)
滝は止まっているのですが、岩に空いた小さな穴から、チョロチョロと水が流れ出し、「漱盤」と刻まれた手水鉢に注いでいます。ちなみに、温泉ではなく、普通の生ぬるい水でした。
手水鉢で手を洗い、階段を登ってすぐ左を見ると、薬師堂と、その前に建てられた寸風反古塚が現れます。
ちなみに薬師堂は、もともとは公園のすぐ下の道沿いにあったものが道路拡幅で移転して来たそうで、そちらの方に解説板が建てられています。
病気に効く温泉に薬師如来はよく似合いますが、火事までは防げないのか、秋葉権現にも来ていただいたようです。
■現地の解説板より「薬師堂の沿革」
西曆962(応和2)年、菖蒲村薬師のお告げにより温泉とともに掘り出された薬師如来像は、長者の持仏堂に安置されていたが、1012(長和1)年、浴槽と屋形が造られた頃、薬師堂も此処に建てられたと伝えられている。
その後幾星霜、つづらを落城の翌年、1582(天正10)年、吉川元春の吉岡攻めの兵火で焼失したのを1602(慶長6)年、亀井公が領主となってから新たに浴槽(亀井湯)が開発され、薬師堂も再建された。
これも1771(明和8)年の吉岡大火で焼けたが数年の後再興され、1810(文化7)年の賊火では難をのがれ、1813(文化13)年、秋葉大権現をお祀りしてからは大火もなく、1933(昭和8)年県道矢橋線改修のため現位置に移転するまでこの地にあった。(昭和56(1981)年8月 明日の湖南を考える会記)
そしてこちらが、寸風反古塚。
寸風は、筒井寸風(つつい・すんぷう)という江戸末期の俳人のことで、この人が自分の書いた草稿など、つまり反古にした紙を埋めたところが反古塚。
これも元々の薬師堂の境内に建てられたものが、薬師堂と一緒に移転してきたそうです。

■現地の解説板より「寸風反古塚」
寸風は木地屋(ろくろ細工師)を本業としていた。当地小椋家の祖、若い頃から俳句を好み雅号は梧城寸風。30歳の頃上坂して蕉門五代梅室雪雄に師事、江戸にも遊んで3年後帰郷し家業のかたわら俳諧の道に精進して独自の境地を作り出していった。64歳、弘化4(1847)年家業を子に譲り庵を建てて隠棲をした際、元の薬師堂の境内に過去の草稿を埋めてこの塚を建てたが、昭和8(1933)年県道改修の折りここへ移されたものである。裏面には、有名な代表作”廻り見る花の果てなし暮れかぎり”が刻まれている。(令和4(2022)年6月 明日の湖南を考える会/吉岡温泉町自治会)
その横にも、いろいろな記念碑やお地蔵様などが並びますが、先を急ぎます。
薬師堂の真向かいには、休憩所があります。まだ温泉街の家々の屋根が見えるくらいしか登っていないのに、休憩には早いだろうという気もしますが、ここにはトイレやちょっとした和室のようなものもあるので、どちらかといえばご近所の方の寄合所のような役割の建物なのかも知れません。
十数年前に訪ねた時には、ここに大きな木製の金精様が保管されていたのですが、今回は見当たりませんでした。
ここからは、やや本格的な山道や石段になりますが、と言っても公園なので、普通の靴でも歩き回れます。
道沿いには西国三十三所巡りの観音様が祀られているので、それを拝みながら歩くのも楽しいものです。
10分ほど登って、秋葉権現のお堂まで来ました。思っていたよりは小さく、可愛らしいサイズです。
そこからすぐの山頂付近に、屋根付きの休憩所があります。
遠くの山なみの向こうに、湖山池が小さく見えています。眺めの良い場所なのは間違いないので、周りの灌木を少し伐れば、もっとよくなるでしょう。
落ち葉積もれる秋葉公園でした。
(2024年8月訪問)
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