3850/1000 広瀬川河畔緑地(群馬県前橋市)

2025/01/30

群馬県 川辺の公園 前橋市

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利根川から分かれる広瀬川は、渋川、前橋、伊勢崎などを流れていく一級河川ですが、前橋ではこれが市の中心部を流れており、古くは農業、舟運、発電、工業用水などに使われて、産業や暮らしを支えてきました。

現在は、上毛電鉄・中央前橋駅付近から上流へ約1.2kmの区間で、川の両岸が緑地・緑道として整備されているので、少し歩いてみました。
区間ごとに周りの市街地状況や整備時期の違いが整備内容にも反映されていて面白いのですが、文章でうまく表現できるでしょうか。

まず中央前橋駅付近に近い久留万橋の上流側。ここでは川の右岸側(南側)が飲食店の多いエリアなので、多くの人の滞留を促すように、少し広めの広場状の空間を作り出しています。

おそらく、いま一番新しい整備区間だと思われ、もともとの車道をコミュニティ道路として狭く、かつスピードを出しにくい構造に変えたうえで、川沿いの歩行者空間をグッと広げています。
また、電線を地中化し、舗装を統一することで、スッキリとした景観になっています。

川沿いも、ほかの区間ではもっと背の高い転落防止柵が使われているのですが、ここでは河道側に安全余地のようなスペースを取ることで柵を小さなものに変えて、川面との距離感を縮めています。

川沿いに芝生スペースを増やす作ることで、座り込んでお弁当を食べたり、ゴロゴロしたりできる場所が増えて、今まで通り過ぎるばかりだった川端が滞留空間へと変えようという試みです。

そのまま200メートルほど歩いて、諏訪橋のあたりまで来ると、先ほどまでの芝生スペースが消えて、急にもこもこした盛土の里山のようなものが現れました。
木立の間になにかあるので、近づいてみます。

木立の中に、真っ直ぐな長い棒。その先には釣り鐘のようなものがあります。「なんだこれは!」

岡本太郎の「太陽の鐘」じゃないですか。確か伊豆の方にあったと思っていたのですが、いつの間にか前橋にやってきているのでした。
家に帰ってから前橋市役所のHPで調べてみると、前所有者である日本通運が伊豆で運営していた施設が閉鎖された後、行き場を失っていたものが前橋のまちづくりに取り組む関係者の希望で日本通運から市に寄贈され、建築家・藤本壮介がデザインした丘の上に置かれたものだそうです。

鐘と、それを吊るす台が岡本太郎の作品、その周りの森と撞木(鐘つき棒)は移設時に新しく付け加えた藤本壮介の作品ということになるのでしょうか。アートそのものの改変では無いように思うのですが、見る場所によっては鐘よりも撞木の方が目立っている気がして、少し戸惑います。

鐘の正面には、岡本太郎特有の”太陽の顔”が描かれているのですが、樹が茂っているとそれを眺めることができないことも困りもの。冬限定の楽しみになってしまっています。なんだこれは?

気を取り直して、諏訪橋の上流へ向かいます。
この区間も川端の道路はコミュニティ道路としてコンパクトに再整備されていますが、ここまでと比べると道路と河道との距離が近いため広場はなく、緑道としての色が濃くなります。

スペースの都合と、この区間には前橋文学館、萩原朔太郎の生家などがあることも相まって、賑やかさよりは落ち着きを重視したものになっているように思います。

でも文学館と生家跡とを結ぶ橋は、幅を広く取り、ベンチなども置いた橋上広場の形になっています。

こちらが川の左岸側にある萩原朔太郎生家。移築されてきた座敷、書斎、土蔵などが並びます。

生家の隣には舗装されたポケットパークがあり、ここも河畔緑地の一部ということになっています。

ここには、1996年(平成8年)に前橋で開かれた“第16回世界詩人会議日本大会”の記念碑が建てられています。
参加された詩人の皆さんの寄せ書き風に作られており、シンプルですが、面白いデザインだと思います。

文学館正面の朔太郎橋から、上流を眺めたところ。このあたりで川が曲がっているために、流れの速さをより強く感じられます。

文学館から、200メートルほど上流の比刀根橋あたりまでは、少し古めの整備内容で、歩道沿いに詩文、馬型埴輪、水車など、きっと前橋名物なのでしょうが説明を聞かないことにはわからないモニュメントが並びます。

悪くはないのですが、久留万橋あたりの現代的なスッキリさと比べると、ちょっと脈絡なく並びすぎという感もあります。

この区間には、明治時代には製糸工場の用水や動力として取水するために設けられた「交水堰」があるので、これをもっと眺めやすいようなスポットに変えていくほうが良いと思います。

比刀根橋は、繁華街である弁天通りに通じており、なかなかモダンなデザインでもあるので、これももう少し目立たせることができれば面白いのですが。

比刀根橋から150メートルほど上流の厩橋までの区間は、再整備の手がまだ入っておらず、歩道・車道が明確に区切られた形になっています。それ自体は悪いことではないのですが、当然、車が走りやすいから交通量も多く、だんだんと緑道としての落ち着いた雰囲気は減ってきます。

そして、国道なので容易には渡れない厩橋はアンダーパスで潜り抜けて、柳橋までの最上流区間へ向かいます。

このあたりまで来ると市街地中心部からは離れ、沿線がほぼ住宅地なので、緑地も賑やかさよりは落ち着き、多くの人が集まるよりはご近所の方が使いやすいようなものになってきます。

ここまでには見かけなかった鉄棒(健康器具?)やパーゴラなど、一般的な公園施設も登場します。

ちなみに川の反対側も、植栽が多めで、歩いて気持ちの良い歩道があるのですが、この時はほとんど歩かなかったので、またいつか訪ねてみたい広瀬川河畔緑地でした。

(2024年5月訪問)

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