以前にNo.1257 で日本国内最古とされる約3万6千年前の人骨が発見された山下町第一洞穴公園を訪ねました。
本土の火山灰由来の酸性土壌とは異なり、サンゴ礁由来でアルカリ性が強い土壌が広がる沖縄では骨が酸化せずに残りやすいとされ、山下洞穴のほかにも、八重瀬町港川、宜野湾市大山など本島中南部のほか、離島の宮古島市のピンザアブ遺跡、石垣島の白保竿根田原洞穴遺跡など、県内20ヵ所くらいで1万年以上前の人骨が見つかっています。
そのなかでも、約1万8000年前のほぼ全身の人骨である港川人が見つかった港川フィッシャー遺跡が最近になって公園整備されたと聞いたので、近くを通りがかった時に立ち寄ってきました。
読売新聞HPより引用『港川人の復元図』 (監修:国立科学博物館、山本耀也 画) |
がしかし、工事の影響か、新型コロナに伴う臨時休業なのか、はたまた情報ミスなのか、重厚な門がしっかりと閉ざされていました。
門の貼り紙を見るとまだ工事中らしいので、情報ミス(ブログ作者の聞き間違い)説が濃厚です。
門の向こうすぐのところにトイレとガケが見えていますが、人骨が出土した場所はもう少し左奥の方なので、どのような整備がされたのかを見通すことができません。無念...
次の機会がいつになるかはわかりませんが、頑張って機会を見つけたい港川遺跡公園でした。
(2021年6月訪問)
【2024年6月追記】
記事を書いてから3年経ち、ついに再訪の機会を得ました。
3年前は閉ざされていた門が開かれ、誰だって自由に園内に入ることができます。素晴らしい!
そして門の外から見えていたトイレ前の崖のところに、崖上に続く階段が設置されていました。前回はこれはなかったので、やっぱり整備途中だったのですね。
前回は歩けなかった園路に沿って角を曲がると、これが遺跡を下側から眺めたほぼ全貌。
遺跡が発見されるまでは採石場として使われてために断崖絶壁になっていますが、これが本来の姿というわけでもなく、解説板によれば”もともとは標高約20mの平坦な石灰岩丘陵が雄樋川に向かって緩やかに傾斜していたと考えられています。(中略)この地の石灰岩層で算出されるアワ石(あるいは港川石)と呼ばれる石の採掘が1900年頃から行われ、切り出された石材は、県下に広く流通し近代沖縄の産業発展に大きく貢献しました”そうです。
なるほどなるほど。人骨発掘はもちろん最大のトピックなのですが、石切場跡など別の時代の遺跡・遺物出土地も全部あわせて港川遺跡なのですね。
こちらが人骨が出てきたフィッシャー。沖縄方言などではなく、英語で ”fissure” と書き、ここでは地形の裂け目のことを言います。
これも解説板から少し略して引用すると”1970年、大山盛保氏により当時採石場となっていた石灰岩層に形成されたフィッシャー下部の堆積物から旧石器時代の人骨をはじめ多種多様な動物化石を発見”したとのことです。
せっかくなのでフィッシャー部分を近くから覗き込んでみたい気もするのですが、遺跡や断崖の保護や、上から物が落ちてきて人にぶつかる事故を防ぐ目的などもあってか、数メートル離れた柵のところからは近づくことができません。
そして広場の反対側には、以前はフィッシャー部分に祀られていた祠が移ってきて、フィッシャーと対面するように祀られています。
右側の祠の中にいるのは布袋様の石像のように思うのですが、沖縄の布袋様はミルク信仰とも混じっているようなので、拝んでいる方がどなたを大切にしているのかはわかりません。
そして、次は階段を通って崖上に行きます。
じつはさっきから歩いているのは河口近くの低い位置なのですが、崖上の高さで川を大きくまたぐ国道橋が架けられているので、国道を通ってくると来ると崖上の方がメインの出入口になります。
こちらが階段を上った崖上部の全景。広場、休憩所、国道からの駐車場などがあり、左側のフェンスの中には戦前まで使われていた石切場の跡地が残っています。
こちらが石切場跡の一部。
解説板によれば、1900年頃からこの崖地に限らず付近一帯で広く行なわれ、1940年頃以前には300~500人の就業者がおり、集落には料亭や銭湯など様々な商業施設が立ち並んでいたそうです。
そして頂上の広場。こうして写真にするとただの草敷きの広場のようで、実際に広場なのですが、その下には「波状文土器出土地」が埋まっており、発掘された出土地を保護するための整備であるようです。
解説板によれば”土器が出土した際にすぐ側で見つかった貝類イモガイを使用して放射性炭素年代測定を行ったところ、約9千年前(縄文時代前期)の年代値が得られました。港川遺跡出土の波状文土器は器の全体像(器型)を復元することができる貴重な資料であり、沖縄の土器分化を研究するうえでとても重要な遺物となっています”とのことです。
このあたりが、下から見上げていたフィッシャーの真上あたりではないかと思うのですが、崖際からは離れたところにフェンスがあってそれ以上は進めないので、よくわかりませんでした。
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