岩手県釜石市の北部にあたる鵜住居(うのすまい)地区は、東日本大震災で2つの特徴的な事柄が生じて、大きな犠牲と、大きな教訓とを残した地区です。
詳しいことは「釜石の悲劇(鵜住居防災センター)」、「釜石の奇跡(釜石東中学校)」で検索していただければと思うのですが、そんな鵜住居の三陸鉄道駅前に整備された慰霊施設が釜石祈りのパークです。
敷地全体としては、駅前広場を兼ねた「うのすまい・トモス」という施設になっており、祈りのパークのほかに、防災学習施設「いのちをつなぐ未来館」や、物産販売・観光交流施設「鵜の郷交流館」などと一体となっています。
賑わいも求められる駅前広場から慰霊空間へと雰囲気を変えるためでしょう、盛土に囲まれ古墳の羨道のような直線的な入口から進んで、その奥が慰霊施設の主要部となっています。
左右の盛土端の仕上げがまったく異なっていることにも、なにか意味があるのでしょうか。
中心部は、円形に周りを囲まれた広場状の空間となっています。
ここが追悼施設としての主要施設である慰霊碑・献花台で、小さく写っている白いものは、震災で亡くなられた方の芳名板です。
慰霊碑の背後に見える丘の部分にも登ることができます。
丘の上に建つ黒い壁のようなものは、この地区における津波浸水高(海抜約11メートル)を表すモニュメントです。
モニュメントの横を通りながら、丘の上から下までぐるっと通じたスロープ式の園路が通っており、地上部を見下ろすことで、津波の高さを実感することもできます。
そして、スロープ沿いのあまり目立たないところにあるのが、防災センター跡地の碑。
■碑文より「釜石市鵜住居地区防災センター跡地」
-偲いを永久に-
釜石市鵜住居地区防災センターは、平成22(2010)年2月1日、この地に建設されました。
地域の消防救急・防災、地域コミュニティーの活動拠点として期待された矢先、平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災により、この建物では痛ましい出来事が起こりました。
地震直後の大津波警報の発表により、この防災センターには数多くの地域の方が避難しましたが、津波は2階天井付近にまで達し多くの尊い命が失われました。
防災センターで起きたこの想像を絶する悲劇を風化させる事無く後世に伝えるためこの碑を建立します。
尊い命を失われた方々の無念を偲い、永久に鎮魂の祈りを捧げます。
平成31(2019)年3月11日
丘の上に立つと、高台に新しく建て替えられた小中学校も見えました。
公園を出て、もう少し近くに寄ってみると、このようになっています。周囲との高低差は30メートルくらいあるでしょうか。
震災前から、この高さの場所に「学校」という誰もが知っている避難場所があったなら、津波の被害も随分違ったものになっていたでしょうが、それは言っても詮無きことです。
ちょうどこの記事が公開される頃は、ラグビー・ワールドカップの観客で賑わっているであろう鵜住居駅。
でも、スタジアムへ向かう前にちょっと足を止めて思いを馳せて欲しい、釜石祈りのパークでした。
(2019年7月訪問)
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