1595/1000　柳本公園（奈良県天理市）-日本1000公園

天理市の南部にあたる柳本は、山の辺の道の通る巨大古墳の密集地帯ですが、古代・中世には興福寺大乗院の荘園・楊本庄、近世には柳本藩１万石の陣屋町として栄えました。

そんな柳本のまちなかにある全長約130メートルの黒塚古墳は、中世・近世に城や陣屋の一部として使われ、そして今は公園になっていて、いわば柳本の歴史をギュッと濃縮したような場所です。
大型古墳の全容は写真には表現しづらいので、後円部に渡る土橋から後円部を眺めます。

そして、墳丘上から陣屋や武家屋敷のあった方向を眺めます。
陣屋は左の方に少し見切れていますが、江戸時代を通じて、織田信長の弟である有楽斎長益の家系が治めていました。

墳丘下の園路沿いからなら、陣屋跡に建つ小学校の校舎が見えました。

『史跡黒塚古墳整備事業報告書』（2005，天理市教育委員会）に掲載されていた「柳本陣屋図」には、濠の中に黒塚が描かれています。
現在は、下の図で黒塚そのもの、周りの池、その上の御蔵、厠、服部千居雄の宅地あたりが公園区域になっています。

古墳については、解説板からの引用で。

●現地の解説板より「史跡黒塚古墳総合案内」
【古墳の概要】
古墳が立地する場所は、東にある行燈山古墳の方向から延びた丘陵の先端部を利用している。墳丘は東西を向いて後円部を東に置く前方後円墳である。全長約130m、後円部径約72m、同高さ約11m、前方部高さ約6mをはかる。
古墳の調査で後円部において竪穴式石室が検出された。石室は南北8.3ｍ、幅約0.9～1.3m、高さ約1.7mあり中央部には長さ約6.2mの粘土棺床が残存していた。木棺はクワの巨木を刳り貫いて作られたが、すべて腐って残存していない。
副葬品は棺内と棺外とに分けて置かれた。棺内には頭部付近に画文帯神獣鏡が1面立てかけて置かれ、身体部には左右に鉄剣と鉄刀が置かれた。棺外では三角縁神獣鏡が33面、鉄製品などが木棺と石室壁の間に配置された。
黒塚古墳は大和古墳群の中に築かれた前期古墳であるが、良好に墳丘を保存していることや、竪穴式石室があまり例を見ない合掌型式の長大な石室であることが明らかにされた。また、三角縁神獣鏡は33面という大量出土と相まって四神四獣鏡を主体とした古相の鏡で構成されていた。
このように考古学的な重要性により、平成13年1月29日付けで国の史跡として指定された。
【黒塚古墳展示館】
展示館は史跡指定地の東側に位置する。後円部において検出された竪穴式石室は破壊が進行しており、現地での公開は適当ではなく砂を充填して埋め戻された。これに替る公開施設として公園内に設置された。1階では竪穴式石室を実物大に復元し、鏡などの副葬品もレプリカで出土状況を再現した。2階には古墳の整備前の模型と、画文帯神獣鏡1面、三角縁神獣鏡33面を展示している。

解説板にあるように、この古墳は埋葬施設から画文帯神獣鏡や三角縁神獣鏡などの古代鏡が大量に見つかったことで有名で、後円部の頂上には発掘時の状態を示す展示がありました。
発掘時の石室の実物大写真を、陶板に焼き付けたものです。

ただ、日に焼けたり、中には上に乗って遊ぶ子供なんかもいるのでしょう、およそ展示とは呼べないほどに劣化しており、写真なのか抽象画なのかもわからないほどになっていました。
これが30年も前のものなら仕方がないのですが、2003年（平成15年）の整備なので、まだ15年も経っていません。手法選択を誤った悪い例だと言えるでしょう。

まぁでも、園内には黒塚古墳展示館があり、そちらでは実物大レプリカを見学することができるので安心です。

1階では横から、2階では上から見学することができ、石室の構造や発掘時の鏡の並び方などがよくわかります。

正直なところ、これがあるのだったら屋外に写真陶板を置く必要はなく、石室の大きさを示す平面表示くらいで十分だったのではないかと思います。

冒頭で述べたように、この古墳は城郭として使われて改変が激しく、現在は市街地にあって都市計画公園になっていることから、平成に入るまで本格的な学術調査は行われていませんでした。
墳丘の前方部には遊具が設置され、子供たちの遊び場となっていたそうです。

おおむね墳丘と池とが国史跡に指定されたことで、古い遊具は撤去され、史跡区域外に新しい遊具が整備されています。
メインは、ロケットのような赤い屋根が載った複合遊具。