ちなみに、このあたりは川崎重工業・神戸工場のお膝元なのですが、地名は旧・湊川の河口付近に位置していたことから来ており、会社の方は創業者・川崎正蔵に因むものですので、どちらも川崎なのは偶然ということになります。
その東川崎町にあるのが、東川崎公園。
2本の道路に挟まれた細長い三角形の用地のうち、狭角部分にポンプ場が設置され、残った台形部分が公園になっています。
でもやっぱり狭い部分はあって、そこは利用しづらいため、何となく草むらになっています。
また、この狭い部分の面積の1/3ほどが、小さく区分された家庭菜園になっています。
現地を見ただけでは、ポンプ場など公園以外の公共施設の用地を市民に貸し出しているのか、都市公園施設としての分区園(都市公園法では、公園内の貸農園をこう呼びます)なのかはよくわかりませんでした。
それらを除いて残ったところが、公園の主要部。
広場、周回園路、複合遊具、東屋などの施設があります。
複合遊具は、アスレチック遊具っぽい橋やネット渡りなどを備えたもの。
ロープ製や木製の部材が多いので、今日目線で見ると、けっこう管理が大変です。
周回園路は、ところどころに健康器具が配置され、サーキットトレーニングができるようになっています。
こちらの階段も、左側が園路としての正規の階段で、右側は踏み台昇降をするための階段なのだと思います。
この高さが違う2本の棒杭と鉄パイプが並ぶ物件も、おそらく何らかの健康運動をするためのものだと思いますが、効果的な運動の方法が思いつきません。
ところで、公園の外に出て、隣接するポンプ場の横手に回ったところに、当町出身の作家・横溝正史の記念碑が建っています。
実際の生家は、道を渡ったところ、現在の川崎重工業・神戸工場の敷地内にあったそうです。
■記念碑 碑文
横溝正史は明治35年に、ここ神戸市東川崎町に生まれた。大正10年処女作「恐ろしき四月馬鹿」を発表して以来、多くの傑作を著し、神戸が生んだロマン的傾向をもつ本格探偵小説の基礎を築いた。昭和55年没。
代表作
本陣殺人事件、蝶々殺人事件、獄門島、犬神家の一族
悪魔が来たりて笛を吹く、八つ墓村、悪魔の手鞠唄
■記念碑横の解説板より「横溝正史 生誕の地碑について」
「八つ墓村」「犬神家の一族」などの作品で知られる探偵作家、横溝正史は、明治35年(1902年)、神戸市東川崎町に生まれた。正史は江戸川乱歩氏の推挙により、大正15年に上京、雑誌「新青年」の編集者を経て作家となった。初期の傑作に「蔵の中」「鬼火」などがある。正史はその後、再び、神戸に戻ることはなかったが、生涯神戸弁が抜けず、また作品のあちこちに故郷を懐かしんでか神戸と思われるような街が折々描かれている。
正史が生まれて100年を経た平成16年(2004年)、その業績を長く顕彰すべく記念碑建立の機運が高まり、関係者、地元自治会、兵庫県及び神戸市薬剤師会、東川崎小学校同窓会、神戸二中(現兵庫高校)武陽会、(社)日本推理作家協会その他、数多くのファンの協力、陳舜臣氏の揮毫「横溝正史 生誕の地」を頂き、記念碑のデザインは神戸山手大学の武田則明教授が手がけて、本格的な建設が始められた。
同年11月23日、秋晴れの日、地元のみならず、遠隔の地からも熱烈なファンが集まり、なごやかに除幕式が行われて、東川崎の新名所となり今日に至っている。
この記念碑は、一見、変わった形をしているが、デザインした武田教授は「2つのメビウスの輪がつながった形は、複雑に絡み合った難事件が、名探偵により、見事に解決されていく”横溝文学”にイメージを得た。この輪は動的であるが、それを載せた立方体は重く、安定して静寂である。この安定は記念碑が変わることなく、永久にこの地に存在し続ける意志の表現であり、同時に、神戸市の市章が、二つの輪が重なってできていることも考慮に入れた」と述べている。
正史作品は没後長きを経た今日でも書籍のみならず、劇場映画、テレビ映画などにも再三取り上げられ人気を博している。また、最近は韓国、中国、タイ、アメリカ、ロシア、フランス、イギリスなどの各国語に翻訳、出版され、国際的にも注目される存在となっている。(野村恒彦記)
※メビウスの輪(メビウスの帯)
帯の両端を180度ひねってつないだもの。これには表も裏もないので、面の上をたどってゆくと、裏側に回り、その後再び表側に戻ってきます。
些細な事ですが気になるのは、解説文の中の「兵庫県及び・・・」というくだり。
通常の流れなら「兵庫県及び神戸市」となりそうなものですが、「兵庫県及び神戸市薬剤師会」となっており、最後まで神戸市が出てこないのが引っかかります(薬剤師会が協力しているのは、横溝正史の実家が薬局であり、本人も薬学専門学校を出ているから)。
見たところ設置場所は道路敷地のようですし、神戸市がまったく関与していないとも思えないのですが、どうなのでしょう?
(2014年6月訪問)
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