このあたりは戦災を逃れた下町なのですが、道路などの基盤整備が十分でないままに住・工が混在して市街化が進んだため、屈曲した細い道路が入り組んでおり、防災上は課題の多い地区です。
そこで葛飾区では、延焼防止や避難に役立つ道路整備、災害時の初期消火や救出・救護活動などに役立つ地域防災拠点の整備を進めており、その一環として整備されたのがこの公園です。
したがって敷地面積は900平米ほどの小さなものですが、地元にとっては公園緑地の少ない地域での憩いの場、防災活動の場として重要な役割を担うものです。
しかし、地域外の人にとっては、特段に注目されるような要素のない公園になるはずでした。
ところが計画・整備の最後の方になって、葛飾区出身のマンガ家・高橋洋一氏の代表作「キャプテン翼」のキャラクター銅像が置かれることになったため、一躍注目を浴びることになりました。
これにより、計画段階では「四つ木一丁目公園(仮称)」という普通すぎる公園名だったものも、開園までに「四つ木つばさ公園」と正式決定されました。
どうせなら、もっとわかりやすく「翼公園」「キャプテン翼公園」などにしても良かったように思いますが、その辺は商標かなにかの関係で難しかったのかも知れません。想像ですが。
ということで、まずは公園の概観。
前述したように公園周辺は細道ばかりなのですが、公園の周囲だけは少し道幅が広くなっています。おそらく、公園整備とあわせて拡幅したものと思われます。
しかしそれでも周囲の家が近いため、公園全体が背の高い防球ネットフェンスに囲まれており、出入口もビローンと垂れ下がった網をめくって入らないといけない構造です。
必要性は理解しますが、手に荷物を持っている時、雨の日などは通りにくいので、私はあまり好きな構造ではありません。
防災拠点としての機能を重視しているため、公園内にはその旨がしっかり記された施設案内板が設置されています。
防災施設を導入している公園では、こうした解説をしっかりして、地域の方がいざという時の心構えをできるようにすること、さらには防災訓練などで施設の使い方を身につけておくことが大切です。
男性たちが腰掛けているのが、かまど兼用のスツール。いざという時には、座面を外すと煮炊きのできるかまどに早変わりします。
その奥に見えるのが防災倉庫。葛飾区の防災倉庫は小学校の体育倉庫ぐらいの大きさがあり、中には発電機やエンジンチェーンソー、消防ポンプなどの大物から、テント、鍋、工具セットまで消火・救出、応急処置などに必要な資機材が収まっています。
こちらは手前が雨水貯留槽に繋がっている手押しポンプ、奥に見えるトイレとの間の地面に並ぶマンホールが災害時用トイレの穴です。
そして、トイレの穴に囲まれているのが話題の「キャプテン翼」の主人公・大空翼くんの銅像ということになります。この周辺状況をわきまえない設置場所に、後付感が満載です。
近づいてみるとこんな感じ。台座込みで170センチくらい、小学生時代の翼くんの銅像です。
さらに近づくとこんな感じ。
いささか微妙な表情に、決して絵が上手な方ではない高橋先生が描く2次元のキャラクターを、銅像製作者の方が3次元に展開していった苦労が伺われます。
「人形は目が命」と言いますが、マンガならではの表現である「目に星」を銅像にも取り入れているのも微妙さの元になっているのかも。
■現地の解説板より 「キャプテン翼 大空翼」
葛飾区四つ木出身である漫画家、高橋陽一氏が描くサッカー漫画。
「ボールは友達」を信条とするサッカー小僧、大空つばさの成長と活躍を描く『キャプテン翼』は、1981年に「週刊少年ジャンプ」誌上にて連載を開始し、全国の少年少女に空前のサッカーブームを巻き起こしたサッカー漫画の金字塔。“日本をワールドカップで優勝させる”という夢を抱くつばさが、多くの仲間やライバルたちと激闘を繰り広げるストーリーや記憶に残る数多くの必殺シュートなど多彩な魅力は、日本に留まらず世界中の多くの人たちを魅了している。また、国内外の有名サッカー選手たちにも多くのファンがいることでも知られている。
作者の高橋陽一氏は、高校3年生の時にアルゼンチンで行われた第11回FIFAワールドカップをテレビで観戦したことで、サッカーの持つ自由さや世界中の人が熱狂する姿に感動し本作品の執筆へのきっかけとなった。また、作中でつばさが通う南葛小学校、南葛中学校は高橋氏の出身校である「東京都立南葛飾高等学校」にちなんで名づけられている。
2013年3月30日建立 葛飾区
作者の出身地というだけで、作品世界と葛飾区の結びつきが弱いところが難点ですが、そこは『こちら葛飾区亀有公園前派出所』に任せて、ぜひキャプテン翼ならではの活用を考えていってもらいたいものです。
-おまけ-
公園の近くにある自治会施設「四つ木一丁目西町会館」のシンボルマーク(というよりは「紋章」)が格好良かったのでパチリ。いったい何を企む自治会!
しかし、つばさ公園の所在地としてはふさわしいかも(笑)
(2014年3月訪問)
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