神戸港にある人工島・ポートアイランドには、南・中・北の3つの大きめな公園があって、そのうちの南公園と中公園は以前に訪ねました。
そして今回は、北公園。ほかの2つとは違って、住宅地からは少し離れ、船溜まりに面した場所にあります。市街地と結ぶ神戸大橋のたもとでもあるため、南・中の2公園とは異なり、やや観光向けの色合いが濃い公園でもあります。
まずポートアイランドの中心地側から入っていきます。
出入口横には、英国風の赤い電話ボックスのようなものがあるのですが、中を除いてみるとそうではなく、何かの機械室のように見受けられました。このあたりも、観光的に気を使っているところだと思います。
そこを通り過ぎて園内へ。すると、まずはイルカの噴水がある舗装された広場。
「舗装された」と書きましたが、この公園の特徴のひとつは、土・芝生に覆われている場所(緑被地)が極端に少なく、8割方が舗装されていることです。
こちらがイルカの噴水。神戸市内に多くの屋外彫刻を残したアート集団「環境造形Q」の作品です。
波の上に飛び出しているイルカだけでなく、波間から背びれだけ出しているイルカ、子供のイルカなどが群れになって泳いでいます。
イルカの広場から北の方へは舗装がレンガ調のものに切り替わり、いくつかの小段に分けて、高さを落としていきます。
その下りはじめにあるのが、手前の「神戸港港湾殉職者顕彰碑」と、それと対になる彫刻作品「港」(森下勲)です。
この顕徹碑は、兵庫県、神戸市神戸港湾関係、労使及び一般有志たちの協賛により建立されたものである。(昭和53年3月)
彫刻の方は、港で働く人たちの姿を捉えたもので、座る人、立つ人、麻袋を担ぐ人、竿を持って艀を操る人の4人が刻まれています。
建てられた時期や場所も考えると、コンテナ船が普及して港湾労働の姿が一変し、それまでの神戸港からコンテナバースばかりのポートアイランドへ移り変わる姿、そうした繁栄の裏で忘れられてしまう殉職者の皆さんを象徴しているようでもあります。
人物だけでなく、岩の部分にもメッセージが込められていると思うのですが、鈍感なのでこれ以上はわかりません。
と、ここで気づいたのは、昭和53年(1978)に石碑が建てられているという点です。
ポートアイランドのまちびらきは、昭和56年(1981)のポートピア’81博覧会の印象が強いので、公園もその前後に開かれたと思いこんでいたのですが、港湾部分はもっと古いのですね。
資料にあたってみると、コンテナバースは昭和45年(1970)には稼働していたようで、昭和54年(1979)撮影の国土地理院の空撮では上端の北公園、すぐ右下の中公園などがしっかりと整備されているのに対して、右下、ポートライナー内側の住宅・商業地はこれからの状態だということがわかります。
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| 国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より/整理番号:CKK791 /コース番号:C14C/写真番号:4/撮影年月日:1979/10/23(昭54) |
さて再び園内。海際に建つのは「みなと異人館」と呼ばれる洋館。
洋館街の北野地区で、1900年代初頭に建てられたものですが、ポートピア'81の直前にここに移築されました。
以前はレストランや結婚式場として使われていましたが、今は原則非公開なので、外から眺めることしかできません
そのすぐ横に、神戸の初代オランダ領事であるボードワン氏の胸像があります。
異人館の隣にあるのですが、時代も異なり、両者にはとくに関係がありません。
■碑文より「ボードワン領事像」
A.J.ボードワン(A J. Bauduin)は、安政6年(1859年)長崎に渡来し、オランダ貿易会社社員として活躍していたが、明治元年(1868年)神戸の開港が実現した時、神戸の初代オランダ領事として就任した。神戸初代領事および貿易商として日蘭友好に多大な貢献をし、明治7年(1874年)に帰国した。
彼の紹介で来日した兄のアントニウスは、日本の近代医学に功績を残し、東京上野公園は彼の提案により造られた。
みなと異人館やボードワン領事像の周りは、護岸に近い舗装の広場が続いており、神戸港の中心地を対岸から眺めることができます。
景色が良いので、この日もケーブルテレビか何かの撮影が行なわれていました。
撮影隊を避けながら横に移動すると、見覚えがあるシルエットのブロンズ像に出会いました。神戸市の公共用地でよく見かける、彫刻家・新谷琇紀さんの作品“CONCORDIA”です。
元々あった場所の再開発によってここへ移されたようですが、その際に付け足された解説文がどうにも嘘っぽいと言うか、「女神が2人で婚姻届」とか「組んだ手は神戸市章」とか、作者はおそらくそんなこと言ってないと思う迷文なのが気にかかります。
■現地の解説板より
この作品は、1980年12月1日 旧葺合区と旧生田区の合併により中央区が誕生した記念に制作され、旧中央区役所南東角に設置していましたが、区庁舎移転に伴い北公園に移設されたものです。
CONCORDIAは婚姻の調和をつかさどるローマの女神です。婚姻届を提出する区役所にふさわしく、2つの立像の重なり合った手は神戸市章をイメージさせます。(2025年3月 中央区役所設置)
彫刻作品はさらにもう一つ、市議会の平和都市宣言を受けた「神戸平和の塔」です。
碑文を読むとまたわからなくなってしまうのですが、昭和37年(1962)はポートアイランドの埋立工事開始(1966年)以前なので、この像も市内のどこからか移して来られたのでしょう。
■碑文より「世界は一つ WORLD PEACE THROUGH WORLD LAW」
神戸市は世界恒久平和と人類の福祉増進のため 世界連邦建設の趣旨に賛同し 全世界の人々と相携えて恒久平和の実現に邁進する平和都市であることを宣言する(昭和37年3月23日 神戸市議会)
と、よくよく歩いてみると、市内の各所から移されてきたアイテムが集まっているのですが、その雑種感がまた神戸らしいとも言えます。
公園から外を見ると、神戸大橋。その向こうには、ビルひとつ分くらいある大きなクルーズ船が停泊しています。
定期航路が入る新港地区は、再開発の真っ最中。新しいアリーナが建ちました。
タグボートが集まる船溜まりの向こうにはポートタワー、ハーバーランドや鷹取山がよく見えます。
改めてロケーションの良さを感じたポートアイランド北公園でした。
(2025年10月訪問)





















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