3693/1000 名月姫公園(兵庫県尼崎市)

2024/07/23

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JR尼崎駅と立花駅との中間あたりを流れる庄下川(しょうげがわ)の畔に、地域に伝わる伝承・名月姫(めいげつひめ)の名を冠した小公園があります。

それほど有名な伝承ではないかと思いますが、遊歩道の向こうの方に見える名月橋を渡ったところの商店街のキャラクターにもなっており、地元では親しまれているお話だということがわかります。

お話の内容は、園内と遊歩道を結ぶところにあるパーゴラの横に、詳しい解説板が建てられています。

■現地の解説板より「名月姫伝説」

約856年前の平安末期、今の尾浜町に才知、徳行に秀でた豪族、三松刑部国松が住んでいた。40歳になっても子供に恵まれず、京都・鞍馬山にこもって祈り続けたところ、久安2年(1146年)8月15日に、玉のような女の子が生まれた。旧暦のこの日は、丁度中秋の名月で、国春は名月姫と名づけた。
成長するにつれ、その美しさは光り輝き、14歳の春、大阪能勢の豪族、蔵人家包に略奪されてしまった。悲嘆にくれた国春は、出家し諸国行脚しているうち、平清盛の手の者に捕まり港を築くため、人柱に奉げられることになった。
ある夜、一人の翁が名月姫の夢枕に立ち「われは大日如来なり、そなたの父の命が危ない」と告げた。姫は現地に急ぎ、涙、涙で助命を嘆願すると、清盛の重臣がそのけなげさにうたれて身代わりとなり、姫は父と共に帰郷、大日如来をまつる寺院を建て平和に暮らしたという。(『立花志稿』による)

こうした伝承の常で、ほかの土地に行けばまた少し違った話があったり、同じ地域でも色んなバージョンが出回っていたりするものですが、この話の場合、「姫がさらわれて、色々あって故郷に帰ってくる」部分と、「平清盛が港に人柱を埋めようとしたら家臣が身代わりになった」部分は、もともと別のお話だったのではないかとも思われ、身代わりの話は今も兵庫港の経ヶ島の伝説となって残っていますが、ここに名月姫は登場しません。

それはさておき、なぜこの公園に名月姫の伝承が被せられているかというと、以下をStreet View風に見ていただきたいのですが、公園の隣にコミュニティホール(地区の集会施設)とお地蔵様があって、これを挟んださらに隣に、尾浜八幡神社があります。

八幡宮は、庄下川に面した東側を向いており、その鳥居をくぐって、右を向いたところに名月姫の墓と伝えられる宝篋印塔が残っているのです。


こちらですね。左の頌徳碑の方が大きくて目立っていますが、今の本題は「名月姫遺蹟」「名月塚」と書かれた右の方です。
形はいわゆる宝篋印塔で、平安時代の墓には見えませんが、亡くなってすぐに墓を建てると決めたものでもないので、100年後くらいに縁の人が建てたものなのかも知れません。

宝篋印塔(名月姫の墓)については、市教育委員会の解説板があるので、よくわかります。

■尾浜宝篋印塔(伝名月姫の墓)

この塔は、通称「名月姫の墓」といわれています。石質は花崗岩であって、相輪がなくなっていますが、笠の部分の頂上までの高さは、1.1Mあります。基礎石には、伏蓮華をほどこしています。塔身の梵字は磨滅していますが、四隅の突起は完存しており、総体には装飾的な彫刻はみられません。創建の時期はつくり方からみて鎌倉末期と考えられています。
名月姫と塔との結びつきは「円福寺大日如来之由来」に、名月姫が久安2年(1146)の8月15日、満月の夜に誕生しましたので名付けられたと記されています。姫が14歳の時、野(能)勢の藤兵衛実包に奮取された という物語があり、彼女は今中将姫の化身としています。この話と塔との年代差はかなり開いてきます。
また「摂津名所図会」に「尾浜村大日堂あり、この寺は名月姫の菩提所なり。また七松に名月姫の父三松国春の古弟あり」とみえますが、詳しい結び付きは不明です。(尼崎市教育委員会)

つまり、公園の隣の神社に名月姫の墓と伝えられる塔があるので、この公園が名月姫公園と名付けられたわけです。園内にいると、まったくその気配は感じられないのですが。

かろうじて、ウサギの動物遊具が「ウサギ→月」という連想で名月まではたどり着くのですが、姫には届かない微妙な距離です。

砂場の周りにもウサギがいますが、ハトやテントウムシもいるので、特別にウサギ推しということでもありません。

そのほかには、No.1602 ゆばブンブン児童公園で初めて見かけた昆虫的パイプ遊具。
平清盛の平家は、揚羽蝶を紋として使っていましたが、そこまで複雑な物語性を与えて遊具を選んでいるわけではないでしょう。

当然、複合遊具やブランコは、ごく一般的なデザインのものです。

伝承ゆかりのアイテムは無くても、木陰でゆったりと遊べる名月姫公園でした。

(2024年5月訪問)

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