埼玉県を走る秩父鉄道には、観光SLのC58パレオエクスプレスが走っています。これの西の終点駅・三峰口駅の北側に、同社が設置する民設公園であるSL転車台公園があります。
資料によれば、以前は使用しなくなった車両を静態保存する鉄道車両公園があったものを、創立120周年事業として再整備して、2020年(令和2年)に現在の形でオープンしたそうです。
もともとが鉄道運行に必要な施設用地なので、業務用の通路を使えば駅からすぐなのですが、一般人は駅舎からはすんなりとは行けません。駅を南に出て、200mほど東へ進んでから、小さな踏切を渡ります。
踏切を渡ってすぐ左を向くと、ビスタの効いたこの景色。
公園のテーマは「地域の自然と鉄道の調和」だそうですが、これを見れば、かなり成功していることがわかります。
しかし荒川の渓谷沿いの崖上にある駅なので、公園敷地は奥が深く、そして出入口が一つしかない、いわゆる「行って来い」形状です。
せめてもの慰めで、園名板を挟んで往路と復路、2本の園路が通っているので、とりあえず土系舗装の方を進みます。
100mほど進むと転車台があり、その横にモザイクアートが飾ってありました。
モザイクアートには、一般の方々から応募されたものを含む1,000枚の写真が使われているとのことで、現地で見ると、ちゃんと一人ひとりの顔が見えるくらいのサイズです。
そして、フェンスに丸く囲われた転車台。これ自体は引込線につながる現役の鉄道施設ですので、公園の外にある転車台を、公園の中から眺める格好になります。
今もSLが来た時は使われているので、外観は古びた様子もなく、かなりきれいです。
それにしてもきれいすぎるというか、木造駅舎が残る三峰口駅の設備としては、明らかに新しく見えます。転車台なんて蒸気機関車専用の設備みたいなものだから、戦前くらいにつくられたものだと思うのですが...
と思いながら解説板を読んでみると、観光SLを走らせることにしたため1989年(平成元年)に新しく作ったものだそうです。なんと、平成になってからの作とは。
記事に鉄道遺産のラベルを付けたけれど、間違いだったかも。
■現地の解説板より「SL転車台のしくみ」
転車台(てんしゃだい)とは、ターンテーブルともよばれ、車両の方向を変えるための機械です。運転台が1箇所しかない車両を進行方向に向けるのに必要な設備です。秩父鉄道の電車や電気機関車には運転台が前後に2箇所あるので、方向転換の必要がありませんが、SL運転には転車台が必要なため、1989年に広瀬川原の車両工場と終点の三峰口駅にそれぞれ1台づつを設置しました。転車台ができるまでの間は、秩父駅構内にあったセメント工場への引き込み線(三角線)を利用して向きを変えていましたが、入換え作業などに手間がかかるうえ、秩父駅につくまでは後ろ向きで運転しなければなりませんでした。
転車台のあたりから、いま来た方向を振り返ります。遠くに見えている形の良い山は、武甲山でしょうか。
そして転車台を通り越した先は、だんだんと敷地が先細りになり、公園としては収束していきます。
ちなみに下写真右側の大きな樹が写っているあたりは、もう荒川の渓谷斜面です。
秋の日に訪ねた、風光明媚なSL転車台公園でした。
(2023年10月訪問)
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