2017/1000 桧川町公園(神戸市長田区)

2019/01/27

自然災害伝承碑 神戸市長田区 身近な公園 兵庫県

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長田区桧川(ひかわ)町は、標高90m~120mくらいのけっこう山の上なのに町名が川なので少し違和感がありますが、苅藻川の上流の呼び名が桧川で、町からはあまり良く見えない谷底に川が流れているようです。

『ながたの歴史』(1977,長田区役所)によれば、「桧川はいまヒカワとよんでいるけれど、もとは、ヒノカワであった。”ひノ川”というのは、日本各地にある名で、霊力のある川、すなわちその流域に農作物を豊かに生育してくれる恵み多い川のことである」とあります。

そんな桧川町にある桧川町公園。道と川とに挟まれ、やや変形の敷地をした小公園です。
広場をできるだけ大きく取り、鋭角にすぼまっている部分に遊具を詰め込んでいます。

遊具は、幼児向けの小さな複合滑り台、ブランコ、揺れる動物など。

複合滑り台は、小さいわりには滑り部が3本もあり、デッキ部分が操縦席にもなっている優れものです。

揺れる動物遊具の奥に2連ブランコ。ブランコまで行くと、かなり奥まった感じがあり、靴飛ばしもできない形になっているのが気がかりです。

もう一つ勝手に気にかかるのが、非常に屋根の座りが悪そうな休憩所。
どうせ柱を4本立てるのなら、素直に4つの角に立てた方がなにかと安定するように思うのですが、どうでしょうか。

さて、そんな桧川町公園の横を流れる桧川(苅藻川)。河川改修によって深掘りされており、公園の隣りですが容易には近づけません。
この川沿いに、1938年(昭和13年)夏の阪神大水害で殉職された巡査親子を顕彰する「嗚呼福田君父子ノ碑」が建てられています。

水害の2ヵ月後には建立されたという顕彰碑。
「兵庫県巡査部長福田秀蔵君は鳥取県の人なり。」から始まる碑文には、当時の林田警察署に勤務していた福田巡査部長が昭和13年7月5日に神戸地方を襲った阪神大水害に際し、堤防決壊の危機に臨むや次子の明生氏を随え、奮然身を挺して住民救護にあたり多数の命を救ったものの、不幸にして倒壊家屋に巻き込まれ父子相抱して殉職された、といったことが記されています。

これについて、神戸大学附属図書館の新聞等アーカイブにある大阪朝日新聞の阪神大水害に関わる連載記事(1938.7.14-1938.7.24)の中には、次のように書かれています。

■緑の住宅街、泥の中福田巡査、愛児を抱き絶命 丸山遊園地附近
 (前半省略)
最も悲惨を極めたのは大日温泉前の神有電車道の地崩れだった
地上から二十間余もある電車道が軌道の枕木を梯子のように取残したままアッという間もなく崩れ落ち住家六戸をすっぽりと埋めてしまった、前日から一睡もとらず警戒にあたっていた林田署丸山遊園地詰の福田秀蔵巡査(六十年)が青年団員として活躍していた愛児明生君(十九年)と相抱いたまま絶命していたのはこの時のことであった、苅藻川上流から押寄せる流木と土砂を呑んだ濁流は物凄い奔流となって川下いったいを襲い檜川との合流点明泉寺橋下の名倉町、宮川町長田町、西山町の川沿いの三千戸中過半数の千七百戸を水浸しとし殊に名倉町一丁目の川に面した家は床上五尺をすっかり土砂で埋めつくし埋没百戸、半壊五百戸を算え明泉寺橋から二町にわたる川床は並行する道路(バス道)より十尺も高い砂原と化してしまった 

また、高祐二『大災害と在日コリアン-兵庫における惨禍のなかの共助と共生』(2014, 明石書店)のp.144にはこうあります。

福田巡査は勤続23年のベテランで、事故のあった3ヵ月前に家族ともども駐在員として丸山地区へ赴任してきた。朝鮮人部落での避難勧告を終えた後、福田巡査と高齢の父親を気遣い付き添った19歳の次男明生の2人は、近隣地域の救助活動を継続した。そして4戸13名のうち11名を脱出させた後、福田巡査は氾濫した河川の泥流が危険水域を超え、神有鉄道の軌道敷を洗い始めたのに気がついた。
「いかん、あの下には4軒の住宅がある」福田巡査は青年団と協力して、2本の電柱間に張られた針金を頼りに急流と化し、川と見分けがつかなくなった道路を一歩一歩踏みしめて救援に向かった。そして最後の救出に行こうとした瞬間、軌道敷は幅35メートルにわたって崩壊、山津波は福田親子の2人の頭上をごう音を立てて落下した。
その後発見された父子の遺体は、共に抱き合っていた姿であったという。

その後に河川改修がされ、顕彰碑の位置も移転されて現在地に来たそうですが、災害と善行の記憶を伝えるものとして、苅藻川沿いに今も建ち続けています。

できることなら、鳥取の方にも思い出していただきたい顕彰碑が(すぐ近くに)ある桧川町公園でした。

(2018年11月訪問)

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