落語でも有名な王子稲荷神社の北に、台地端の崖地の滝を取り入れた庭園風の公園「名主の滝(なぬしのたき)公園」があります。
その名の通り、江戸時代に王子村の名主がここに自邸に置いて庭園を作ったことに起こりを持ち、明治以降は人手に渡って改造を続けながら邸宅、民間の庭園レストラン、戦災などを経て、1960年(昭和35年)からは公園として一般公開されています。
ですので、都市公園ではあるのですが、中身はほぼ回遊式の日本庭園。
主要な出入り口が2つあるのですが、どちらも和風で趣のある門になっています。それだけに、虎模様の車止めは勘弁してほしかったところ。
比べれば、上の公園としてのメインゲートよりも、こちらの薬医門の方がより美しいですね。門の向こうにスーッと園路が伸びて、その先の木橋が見えるので、見えてない池まで視線を引き寄せてきます。
石畳も凝ったものになっていて、邸宅時代の豪奢さを感じさせます。
園内はいくつかの滝を取り入れた回遊式庭園になわけですが、平らな部分はだいたい池なので、歩くのはもっぱら池端か斜面地になります。
これが一番大きな雄滝。高さは7~8メートルあります。
水量が豊富な上に、わりと近くまで歩いて寄れるので、写真の教科書みたいにシャッタースピードを変えて同じ滝の写真を撮ってみました。
上がシャッタースピード低速で水の流れを滑かにした写真、下が高速で水の動きを止めて躍動感を表現した写真です。
自然物ではなく石を組んで作庭したものなので、落差のある滝が、下の方に積まれた石に当たって砕ける様子も計算されており、適当に撮ってもそこそこサマになります。
この滝から落ち出た後は、栃木県の塩原をイメージして造景されたという渓流になって流れていきます。
ベースとなるのは明治時代に個人所有だった時期の植栽だそうですので、景色としても非常に馴染んでおり、ちょっとしたドラマ撮影くらいなら、遠くまでロケに行かずともここで十分なくらいです。
この渓流には、途中で雌滝、独鈷の滝、湧玉の滝からの流れも加わってくる構造になっていますが、私が訪れた時は湧玉の滝がチョロチョロ、ほか2本の滝は枯れていました。
石の造形だけでもうっすら楽しめるのですが、やはり滝には水が落ちている方が良いのは間違いありません。
そしてこの流れは、最後は、冒頭の薬医門を入ってすぐの池に流れ込みます。
滝、流れ、池がメインなのですが、滝があるからにはガケがあり、斜面地の森を抜けてガケの上にも行くことができます。
じつはガケ上にはポンプ施設があり、ここから園内に水を流しているようです。
ポンプ場の周りには、幼児プールや児童公園などもあって、行政の取り扱いとしては崖の上と下をあわせて一つの都市計画公園になっています。
この児童公園だけでも1,000平米くらいはありそうで、ひとつのブログ記事にできるのですが、ガケ下から上がっていくとフェンスがあって、見えているのに入ることができません。
出入口を探してみたけれど見つけられず、これ以上、こんなところを歩いていると不審者になってしまいそうなので、断念。いちおう通路ではあるのですが。
ガケ上のことはさておき、山手線の王子駅から徒歩10分でこの景色。もう少し手を入れれば、インバウンドの皆さんも押し寄せてきそうで、なかなか侮れない名主の滝公園でした。
おまけ.
園内にポツンと置かれていた謎の石造物。
古墳の石棺のようにも見えますが、いったい何なのかが不明。
(2018年1月訪問)
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