天空の名のとおり、新設された首都高速・大橋ジャンクション(JCT)に架けられた屋根の上、そこを広場や花壇、菜園などのある公園にしたもので、法制度的には都市公園法の立体都市公園制度が適用されています。
立体都市公園制度というのは、ごく大雑把に言うと、以前は公共施設の屋上にしか都市公園はつくれなかったのですが、法改正で民有地の上にでもつくれるようにしたものです。これによって新しい公園用地が確保しづらい市街地でも、条件があえば建物屋上を都市公園として整備・開放することができる(逆の視点で言えば都市公園の地下を民有駐車場などが占用できる)わけです。
ではなぜジャンクションに屋根を架けたかというと、この大橋JCTは住宅地に近い元・バスターミナルなどの再開発地であり、そこに新しく複数方向につながるフルジャンクションを造ろうとしたため、狭い土地でもフルジャンクションを可能にする4層重ね、周辺への騒音や排気ガスを抑えるための屋根・壁による全覆い型が採用されたというわけです。
じっさい、行ってみるまではもっと賑やかなところを想像していたのですが、周囲は思いがけず落ち着いた住宅地だったので驚きました。下の写真はジャンクションの足元を流れる目黒川。
と言うことで、目黒天空庭園へ向かいます。が、入口近くにいきなり怖い注意書きがあって驚かされます。
ジャンクションと一体化した高層ビルからビル風が吹くのか、「風で車道に押し出される可能性があるから、信号待ちの時にも車道近くに立つな」とのお触れです。注意書きの書かれているアクリル板みたいな物件は、どうもビル風の減衰装置のようです。怖いな~、そんなビル建てていいのか?
公園の入口付近、地上部。この時点では、ジャンクションのボリューム感に圧倒されます。
公園本体に登っていく途中の導入部。まだ高架下利用で薄暗さが伴いますが、光沢のあるタイルと御影石、耐陰性のある地被植物を使ったデザインで雰囲気を落ち着かせています。
トンネルを抜けると、いよいよ公園本体です(この写真は抜けた後に振り返っていますが)。
この上とか横とかの壁の中を車が通っているのだと思いますが、騒音や震動はほとんど感じられません。むしろ周囲の一般道路からの音の方が聞こえるくらいです。
公園に入ると集会施設を併せ持つ管理棟があります。この公園は夜間は閉鎖されますが、開園時間中はスタッフが常駐しているそうです。
管理棟の周りには、車いすの人でも使いやすい高さのあるプランター花壇。花や野菜づくりを通じたコミュニティ活動の場となります。
トウモロコシやジャガイモの植えられた畑。
隣には堆肥づくりのための落葉溜め(落ち葉ンクと名付けられています)があります。
屋上緑地には管理用の軽トラが入れませんから、落ち葉や花がらなども堆肥化して減量するのでしょうか。
公園の中ほどにあるエレベーター。降りると後述するオーパス夢ひろばのそばへ出ることができます。
くつろぎの広場。芝生は立入可能なので、陽気の良い頃には、ゴロゴロするのにちょうど良いと思います。
四季の庭と名付けられた花植栽のコーナー。高低差のある階段状の花壇になっています。
最終的にはビル9階の高さにある東口広場まで登り、そこから区立図書館などの入居するビルへ出入りができます。写真は東口広場の展望デッキ。
こちらの写真は東口広場から見えるけれど入れない田んぼのようなビオトープ。
どうやらフェンスの向こうは首都高の換気口と管理施設を併せたビルの屋上のようで、一般には開放していないのかも知れません。
と言うことで、地上から一回りしてきましたが、空間としては非常に気持ちの良いものとなっています。最近ではビルの屋上庭園そのものは珍しくありませんが、ここは真っ平らではなく緩やかにカーブしながら遠くまで見渡せるようになっているので、歩くことが楽しくなります。
技術的には、土と水の処理をどのように工夫しているのかが気になります。
屋上庭園は、ビルの屋上に壁を立て、屋根と壁とに囲まれた中に土を入れているという構造なので、いわば巨大なプランターのようなもの。それが斜めに傾いているので、雨が降ると地上も地下も水が流れていくことになります。
全体がバリアフリー対応なので、勾配がすごくキツイということもありませんが、それでも大雨の時には地上部に変な流れができてしまわないか、土や芝が流されて下の方に溜まるんじゃないか、地下に浸透した水の流れは...など気になることは多いですね。
実際は、地下にいくつもの堰堤と雨水貯留槽を埋めてあって、それで土が動かないように、水が一気に流れていかないようにコントロールしているそうですが、最近の豪雨は異常な量が一気に降りますので、人ごとながら気がかりです。
さて、ここまでが天空部。そこから目を転じれば、コンクリートの谷底(ループの穴の中)にもオーパス夢ひろばと名付けられた人工芝の多目的広場があります。
「オーパス」は、公園や広場、ビルなどを含めた地区全体の愛称のようです。
下に降りるとこんな感じ。ループの穴の中の半分ほどを使ってグランドゴルフやサッカー練習などに使える人工芝の広場と、隅の方にはジャブジャブ池、小さな遊具コーナーなどがあります。
訪れたのが5月だったので、ジャブジャブ池に水は入っていません。
位置的に広場の一番隅のほうで壁に近いところにあるので、壁の日陰になる時間帯には少し肌寒いことがあるかも知れません。
とは言え、確かに谷底ではあるのですが、実際に中に入ってみると写真で見るほどの圧迫感はありません。外周部に植えられた樹がもう少し育ってくれば、さらに雰囲気は落ち着いてくると思います。
全体を外から見ると、こんな感じ。ちゃんと屋上まで届く非常階段も備え付けられています。
将来的にはツル植物で壁面緑化をおこなうと予定だと聞くのですが、ツルを絡ませるための補助ネットなどは見あたらず、詳しいことはよく分かりません。
ちなみに、ループの穴の中のうち、もう半分ほどは首都高会社が使用しており、訪れたときは首都高バイク隊(黄バイ)が練習中でした。これはけっこう珍しいかも。
天空庭園だけでなく、地上部もお忘れ無く。
●目黒区による公園紹介ページ
(2013年5月訪問)
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