229/1000 富名腰井戸(沖縄県宮古島市)

2013/01/04

沖縄県 宮古島市

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No.228の小公園に井戸(らしきもの)が出てきましたが、あのように地表部に普通に掘ってある井戸は、宮古島では比較的新しい井戸だと思われます。
と言うのは、宮古島は島の大部分が隆起したサンゴ礁由来で隙間の多い琉球石灰岩でできており、降った雨は川や池をつくらずに地下に染み込んで行きます。

地下には水を通しにくい泥岩層がありますので、これよりも上部に水が溜まります。そこで、井戸で水を汲まねばならないわけですが、これが古い時期には天然の洞窟に下りられるように岩を削って階段などをつくり、洞窟の底に湧き出た水を汲んで使う「うりがー(下り井)」という形態のものでした。
うりがーは現在も島の各所に残っており、深いものでは20mも下らねばなりません。地下の鍾乳洞のようなところに、足下に気をつけながら一歩一歩下りていくと、労働の大変さを知るとともに何か神秘的な気分にさせられます。

さて、今回登場する富名腰井戸。公園というほどのものではなく、古い井戸の周囲だけを小規模に整備したものです。
場所は、平良市街地から空港に向かう途中の富名腰地区にあります。途中と言いましたが、バイパスが通っていて市街化が進んでいるので、ほぼ市街地です。
真上から見るとわかりにくいのですが、3mほど下りたところにある井戸で、井戸本体は危険防止のためでしょうが蓋をされています。また現状では洞窟のような穴ではなく、石垣を積んで穴のようにした底に井戸がありますので、これが「うりがー」に分類されるのかどうかも自信がありません。

古くから集落に残る井戸を2011年に整備したものということですが、なんというか全体に雑さ加減が目につきます。

おそらく整備前は写真左手の雑木林が続いていた中にあったと思われますが、現在は切り開かれて明るすぎる印象です。もしかすると井戸が使われていた当時はこういう雰囲気だったのかも知れませんが、現在の井戸はどこもちょっとした森の中なので違和感があります。
写真中央、お手製の「木切るな」の看板を置いた人も同じ気持ちだったのかもしれません。

後ろのタイル工場の壁、周囲のブロック塀、電柱を立てるためのワイヤーなど、景観的に難ありのものがほったらかしなのも気になります。もう少し植栽で隠すなどの工夫が欲しいところです。
足元もあえて当時のままなのでしょうが、ガレ石がごろごろしていて歩きにくくなっています。コンクリートで固める必要はありませんが、地面を突き固めるなどしても良かったと思います。

と、悪口としか聞こえないことを書きましたが、これはあくまで観光客目線。
井戸は本来地域のものであり、今回の整備も文化財保存ではなく地域づくりのためのものだそうなので、地域の人が納得していれば構わないというのも事実です。
宮古島にはおおらかで細かいことにはこだわらない人が多いので、これもまた良しなのです。

宮古島の地層について説明したページ(宮古土地改良区)
井戸の整備について触れたページ(宮古新報)

(2012年10月訪問)

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