京都市街から三条通を通って鴨川を東に渡ったあたりは、平安遷都以前から粟田郷と呼ばれ、都が置かれてからは東国との出入口となる「粟田口」として賑わうようになりました。鎌倉時代からはここに著名な刀工が工房を構え、彼らが作った刀は国宝や重要文化財になっているものも多く、粟田口派と呼ばれています。
この粟田口に天台宗寺院である青蓮院(しょうれんいん)あるいは青蓮院門跡とも呼ばれる著名な寺院があります。多くの皇族が門主を務め、江戸時代には仮御所となったこともある古刹で、境内にある何本かのクスノキの巨木はここで得度を受けた親鸞聖人のお手植えと伝えられ、東山魁夷が画題としたことでも有名なものです。
ということで、青蓮院の北隣にある小公園の名は「粟田口あおくすの庭」。名称からはかなりの七光り、それも両親ともが有名人の2世芸能人という感じですが、大丈夫でしょうか。
敷地全体がフェンスで囲まれ、門は昼間だけ開放される全フェンス型の敷地となっており、一般的な都市公園ではないことが伝わってきます。
園内には、古都法に基づく「歴史的風土特別保存地区」の標石が建てられています。この保存地区は土地所有に関わらず法令で指定されるのですが、指定後に所有者が希望すれば自治体が土地を買い取ることがあるので、この場所もそうした形で市の所有になったものを、地域住民や観光客たちの憩いの場として整備・開放したものではないかと想像します。
正面右手の樹林は青蓮院の境内なので、それを背景にした、軽い散策用の園地といった仕上げです。
訪れたのが秋の終わりだったのでまったく目立ちませんが、園地としてのシンボルツリーは正面の枝垂れ桜でしょう。
幹には菰が巻かれて、もう冬支度になっていました。
園路がグルっと通っているのですが、こうきれいな園地だと、犬の散歩などでフラフラ入ってくるには気が引けるのではないかと思います。
この奥まって角張った広場は、季節の良い頃合いなら、ちょっとした野外展覧会などにぴったりな雰囲気です。
名前負けせずに大きく育って欲しい粟田口あおくすの庭でした。
(2021年11月訪問)
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