2917/1000　岩屋街園（神戸市灘区）-日本1000公園

岩屋街園については、以前から資料で名前は目にしていたのですが、実際にどこなのかはよくわかっていませんでした。今回、現地を歩いて全容が明らかになった（ような気がする）ので記事にします。

まず、下写真が岩屋街園のほぼ全体です。
「え？これはただの駅出口じゃないの？」と思われたかも知れませんが、阪神・岩屋駅の改札を出たところのレンガ敷の広場が岩屋街園なのです。都市公園の種別は、”広場公園”。
ちなみに駅舎や地面がやけにカラフルなのは、ここが兵庫県立美術館の最寄り駅だからです。

もう少し後ろに下がると、道路から駅に向かって4～5段ほどの階段を上るのですが、

ここに「岩屋街園」の園名板がありました。

園名板がある植え込みの中には「風舞」と名付けられた現代彫刻が置かれています。
作者は松本勉さん。以前に同じ神戸の須磨離宮公園で2年に1回開かれていた「神戸須磨離宮公園現代彫刻展」の入選作品だそうです。
このビエンナーレの入選作は市内各地の公園に展示されているので、これがここにあるということも、岩屋街園の区域を捉える手がかりになるように思います。
とは言え、いわゆる公園っぽい施設は、園名板とこのモニュメントくらいです。

場所を変えて、改札口あたりから西にある「風舞」の方を見ます。
写真中央からやや左、ずっと先の高層ビル方面に向かっている道路は阪神電車が併用軌道（路面電車）だった時代のルート跡ですが、現在はこの岩屋駅付近から西は地下化されています。

地下化されたのは1933年（昭和8年）とずいぶん古い話なのですが、この時に線路が下に潜って広くなった道路に接続するために駅周辺でも道路が付け替えられたことで三角地が生まれ、ここを使って当初の岩屋街園がつくられたようです。もっとも資料によれば公園としての開園は1970年（昭和45年）とのことなので、それまでの間、三角地がどのような土地利用だったのかはわかりません。

その後、阪神・淡路大震災の後に駅近くで大きな復興再開発が行なわれたこともあって、街園と駅とが大きく変わって現在の姿となっています。
まず下の１枚目が1995年の空撮（基図は国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より／整理番号：CKK942／コース番号：C1／写真番号：1430／撮影年月日：1995/01/17）に、街園と駅舎との位置関係を書き込んだものです。緑色が街園で、オレンジ色が駅舎。

掘割の半地下のようなところを通っている線路のすぐ北に地下化以前からの細い道路があり、その上に斜めに入ってくるような新道ができたことで生じた三角地が1995年当時の岩屋街園だと思います（区域は樹木があるところを囲っているだけなので、少し違っているかも知れません）。

そして現在の街園と駅との位置関係をGoogle Mapの衛星写真に加筆して示すと、下のようになります。
掘割の線路に蓋をするような格好で駅舎が東に動いた上で北にも拡張され、元々の岩屋街園の区域にまでせり出します。駅舎が拡張したのは、駅ホームが島式1面から対向式2面になりエレベーターやエスカレーターも設置されるなど、周辺の再開発にあわせて駅機能の充実が図られたためです。
これにより押し出された岩屋街園は、駅舎の西側へと移転し、駅舎北に残った小さな三角地は駐輪場になります。

ところが、じつは岩屋駅は1933年の地下化に際して駅ホーム、駅舎ともそれ以前の場所から一度西に動いており、そのあたりのことが簡単に書かれた解説板が公園内に設置されていました。

■現地の解説板より「三味線の音色が聞こえた駅」
阪神電鉄岩屋駅は、明治38年に神戸（三宮）～大阪（出入橋）間が開業しました。当時の岩屋駅は現在の位置よりも東にありました。駅の南側は花街として栄え、料理店や貸し席が軒を連ね、芸者衆の弾く三味線の音色が聞こえました。岩屋～三宮間は道路との併用区間でしたが、昭和8年に地下化されました。地下トンネルの入口に石の文字額が掲げられています。明石在住の学者橋本海関の文によって、上りは「技補天」、下りは「和風通」と書かれています。震災後HAT神戸の整備にともない。岩屋駅も改良工事が行われましたが、この2つの文字額は移設され、プラットホームから見ることができます。

花街があったせいか、駅が西に移った後も、もともと駅があった東側方面に出入りするニーズは多かったようで、戦後までは東口が使われていました。東口が廃止されて久しいのですが、階段だけは今も不自然に残されています。
上の空撮に戻って、この階段を上った先の跨線橋が妙に幅広になっているのは、旧・東口駅舎の名残だろうと思います。