神戸市灘区の南部・新在家(しんざいけ)地区でもとくに海寄りの新在家南地区には、明治中頃から小泉製麻(当時は都賀浜麻布)の工場・倉庫が建てられ、昭和中頃には社宅や寮なども増えて同社の一大拠点となりました。
しかし昭和の終わり頃から、同社では徐々に工場の郊外移転などを進めるとともに、残った赤レンガ建物を商業施設に転用するなどして洒落た街なみの再開発地区を生み出します(その頃の写真は小泉製麻のHPでご覧ください)
ところが、これらが1995年の阪神・淡路大震災で壊滅的な被害を受けたことから紆余曲折あって、商業施設部分は違った雰囲気の施設に再建され、それ以外の工場跡は復興住宅等へと姿を変えます。
この復興住宅に隣接して整備されているのが新在家南公園ですが、園内に温浴施設もあるため園名板は兼用です。
園名板があるのは温浴施設へ向かう大きなスロープの入口付近。その左に建つのが震災復興住宅です。
復興住宅との境界には100メートル以上に渡って巨大なコンクリート壁が建てられており、せっかくの公園と住宅との関係性は希薄なものとなっています。
公園敷地は大きく上下2段に分かれていますが、下段はコンクリートの壁によって細長く区切られたスペースに小さな複合遊具、登攀遊具などが設置された遊び場になっています。
こちらはジャングルジム的な登攀遊具。
スロープの手すりがある壁との距離が1.5メートル足らずで、勇気を振り絞れば飛び移れそうな絶妙な距離になっています。
上段へ向かう階段の横には、大きく頑丈そうな井戸ポンプがあります。
本来は防災目的でも、ふだんは遊びに使っても構わないはずなのですが、据え付けてある場所も悪いし、流れる先の溝のつくりも素っ気なく、どうにもいけません。
ここで後ろを振り返ると、再開発の跡に再建された商業施設・サザンモール六甲がよく見えます。
階段を通って上段に出ると、健康器具が置かれた小広場があり、その向こうに半地下構造になった温浴施設・灘浜ガーデンバーデンの屋根が見えています。高架道路の向こうに見えているのは神戸製鋼の工場内にある石炭発電所です。
ガーデンバーデンの熱源や冷暖房には、この発電所から供給されるエネルギーが利用されています。そもそも発電所を建てる時の地元対策の側面を持った施設であり、公園の中にあるのですが建設・運営とも神戸製鋼がおこなっているため、イマイチ公園内で浮いた施設となっています。
建築は安藤忠雄の設計で、半地下というか、もともと平らだったところに盛土をして埋めた風にしているというか、なんだかよくわからない構造です。
建設当時の資料が手に入らず情報不足なのですが、どうも公園全体も安藤忠雄の設計のようで(神戸市HPの”神戸観光大使・安藤忠雄氏”のページには、代表作として新在家南公園が記されています)、そう言われれば思い当たるところも多々あるデザインというべきか。
であれば、コンクリート打ちっぱなしを多用した無機質な空間デザインにも納得です。
公園としての美しさや使い勝手の面からは、まったく納得できませんが。
色々あってこうなっている新在家南公園でした。
(2021年10月訪問)
0 件のコメント:
コメントを投稿