沖縄本島南部、玉城の仲村渠(なかんだかり)地区に、国の重要文化財に指定されている湧水「仲村渠樋川(なかんだかりひーじゃー)」があります。
現地の解説板によれば、1912年(大正元年)から翌年にかけて従来からあった簡素な井戸が琉球石灰岩の立派な石組みのものに作り変えられ、沖縄戦で破壊された後に1964年(昭和39年)にモルタル造で修復されたものが、2004年(平成16年)に大正時代の姿に復元されて現在に至るそうです。
水場の前にある石畳の広場や坂道も、2004年の復元だろうと思います。
奥の崖地から水が湧いているのを、屋根の架かった石積み部分で一度受け止めて、腰高くらいの高さにある3ヵ所の吐水口から出しているようです。
解説板によれば、ここは男性が水浴びなどをする「いきががー」、写真手前の少し低くなっているところは「芋洗い場」となっています。
角度を変えてみると、こうなっています。
全体が地形なりに傾いており、芋洗い場のところから石畳道の下に向かって排水されています。
広場の下から道一本だけ挟んだ反対側は水田や畑になっており、そこに向けて水を流して農業利用しているようです。
ちなみにこの付近は「沖縄における稲作発祥の地」だと伝えられています。
そして、いきががーの横手、狭い代わりに石垣で囲まれて周りから見えにくくなっているのが、女性用の水浴び場「いなぐがー」です。
いきががーと同じように腰高くらいのところに吐水口があるのですが、そこには石が置かれて塞がれており、すると中に水が溜まって上部の吐水口から湧き落ちる構造になっているようです。つまり現代のユニットシャワーと同じように、高・低の使い分けができるのですね。
さらに、冒頭の全景写真で右端に写っている赤瓦屋根の建物は、中に五右衛門風呂が据えられた「共同風呂」です。
沖縄県内には、戦前くらいまでに生活用水や水場としてきれいに整備された樋川はたくさんあるのですが、沸かして入る風呂付きの樋川は初めて見ました。
改めて全体を見ると、こんな感じになっています。
さて、見事な樋川があったので、ついその話から始めてしまいましたが、仲村渠農村公園は樋川の道向い、下写真で坂道右側のガードレールの向こうにあたります。
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