2666/1000 ジリグスク(沖縄県八重瀬町)

2021/02/16

沖縄県 史跡 八重瀬町

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No.2665 勢理客小公園の勢理客(じっちゃく)と少し似た綴りの勢理グスク(じりぐすく)。並べてみるとジリ(勢理)という言葉に地形などを表す共通の意味があるようにも思うのですが、詳しいことは知りません。
ここは本ブログがいつも訪ねている都市公園ではないのですが、訪ねた記念に記事を残しておきます。

ジリグスクは八重瀬町富盛(ともり)集落の西側にある独立丘を使ったグスクで、周囲は崖状で、頂上だけが平坦な広場になっています。
グスクには「城」という漢字を当てますが、いわゆる城のように戦闘用、領主の居住用といった役割だけでなく、集落祭祀のための要素もあり、ここのように小さなものは祭祀場としての役割が強いのではないかと考えます。

このグスクが有名なのは、文献に残る最古かつ最大の村落獅子があるからです。
高さ140センチほどの大型の獅子は「富盛の石彫大獅子(ともりのせきちょうおおじし)」として、沖縄県の有形民俗文化財に指定されています。
今のように個人宅にシーサーが置かれるようになったのは明治以降のことで、それ以前は集落の外回りなどに置かれる「村落獅子」が一般的でした。それの元祖ということになります。

琉球王国の正史である歴史書『球陽』には、村内に不審火が多いことに困っていた富盛村の住民が久米村(現在の那覇市久米。琉球時代には中国からの渡来人が多く住んでいた)の風水師に占ってもらったところ、「フィーザン(火山:風水的に火の要素が強すぎて村に災いを呼ぶ山という意味でしょうか?)である八重瀬岳に向かって火除けの獅子を建てるべし」との助言を得て、1689年にこの石獅子を置いたということが記されているそうです。

いま沖縄に残る村落獅子は手作り感あふれる素朴なものが多いのですが、この獅子は彫りが深い精巧な顔をしており、かなりの技術を持った石工が作ったように思います。
富盛村の皆さんは、久米村の風水師に勧められるままに、中国製の高い獅子を買わされたのではないかという疑念が生じるほどです。

霊感商法ではなく、それで火事が収まったのなら良いのですが。
今は八重瀬嶽の方角は、樹に隠れて見えにくくなっています。

さて、本題のジリグスク。
駐車場から階段を登ってすぐのところに石獅子があり、その前を通り抜けた向こうが広場になっています。

解説板などには「戦前までは旧暦9月9日に、村の青年たちがジリグスクに集まってタントゥイ(種子取り)棒の踊りを演じた」と書かれているので、この広場がそうした祭りのスペースに使われていたのではないかと思われます。

広場の奥の一角が休憩場所と展望スペースを兼ねたような形で整備されています。

展望台の周りには、枯れ朽ちた立木が並んでいました。山火事の後ではないようですが、台風被害でしょうか。

観光地というほどでもありませんが、個性的な顔立ちの石獅子を通じて地域の歴史にふれたジリグスクでした。

(2020年12月訪問)

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