付近はJR新長田駅の北側すぐにあたり、震災前は住宅・店舗・小工場が入り交じる密集市街地だったのですが、大きな被害を受けて全体で約60ヘクタールにおよぶ大規模な区画整理事業が行なわれ、元々の水笠通2丁目がまるごと公園区画になりました。
区画整理事業で町の姿が変わることはままありますが、数十軒の家々がまとめて立ち退きとなると、かなりの大事です。そんなわけで、震災復興や慰霊の碑ではなく、水笠通2丁目そのものを偲ぶ碑が設置されていました。
■現地の碑文より「水笠通二丁目の碑」
震災復興まちづくりとして、地域の防災拠点となる公園をこの地につくることになり、私たち住民は、これに協力し近隣などに移転しました。
ここに、万感をこめて、三百数十人がともに暮らした、ありし日のわが町の姿を刻み、後世に伝えます。2009年3月 水二まちづくり協議会 旧水笠通二丁目自治会
その碑のある出入口を入ると、「水笠遺跡」の解説板がありました。
No.744 御蔵北公園などでも見たように、阪神・淡路大震災後の区画整理事業では、それに先立つ発掘調査で多くの遺跡が見つかっています。
■現地の解説板より「水笠遺跡」
水笠遺跡は震災復興土地区画整理事業に先立つ試掘調査で平成11年に発見された遺跡です。長田区水笠通2丁目～3丁目の街区に拡がる集落（ムラ）の跡と考えられます。発掘調査の結果、弥生時代後期、古墳時代後期、平安時代後期～鎌倉時代前半の遺構（古代人が掘った穴や溝など）・遺物（土器や石器など生活に使われた道具）が発見されています。
水笠通公園の建設に先立つ発掘調査では、古墳時代後期（6世紀中頃～後半）の竪穴建物3棟、掘立柱建物8棟のほか、柱穴や土坑、溝などのまとまった遺構が発見されました。竪穴建物は一変役6mの大きさで、床の上には当時廃棄された土師器や須恵器が残っていました。掘立柱建物は竪穴建物より少し新しい時期のものです。柱穴が一辺約80cmを超える大型のものもあり、大きく立派な建物であったと推定できます。このあたりが当時の集落の中心部分であったことがわかります。（後略）
園内は、中心部に広く土広場を取り、外周部にグルリと一周できる園路、途中に遊具をまとめて配置するスタイルです。
個人的には、もう少し高木を多くして林のようになった場所を作っても良いと思うのですが、震災直後の計画なので、避難場所に使える広場をできるだけ大きくしたいという事情が働いたのかも知れません。
中規模程度の複合遊具が2基あるのですが、どちらも遊具の直近には大きくラバーマットが敷かれ、その外側は芝生になっていますので、小さな子供でも安心です。
幼児向けの恐竜型滑り台もありました。
それらの遊具の隣には、高さ2メートル以上ある大きめの盛土山があります。
おそらくは、ただの遊び道具ではなく、下に防火水槽などが埋められているのではないかと思います。
登れるようになっているので、いちおう登って園内を見渡すと、このような感じに。
わずかのことなのですが地上にいるのとは違った景色になるので、小さな子供たちの感覚を育むには、こうした高低差を使った遊び場も大切だと思います。
そして山の裏側に回ると、このように豊富な水が流れ出ています。
この水源は長田区民に親しまれる高取山付近からの湧水だということなので、後ろの山も高取山をイメージして築かれているのかも知れません。
湧水は公園内を流れ抜け、街中のせせらぎとなって伸びていきます。
何事もなければ子供の遊び場ですが、震災の時に水が足りずに苦労した経験を伝えるアイテムでもあります。
マンションの間にわずかに見えているのが高取山。
この山というか付近の街の地下を、ちょうど震災の前後に工事された阪神高速道路神戸山手線の地下トンネルが通っているので、そのトンネルから出た湧水が活用されているのだと思われます。
そして最後になりましたが、南側の道路に面したところには、高さ1.5ｍくらいの大きな「震災復興の碑」が建立されています。
震災発生から14年を経て建立された碑に、復興事業の道のりの遠さを改めて感じる水笠通公園でした。
■現地の碑文より「新長田駅北地区 震災復興の碑」
1995年1月17日、午前5時46分に発生した阪神・淡路大震災により、建物の倒壊や火災が発生し、多くの尊い人命が失われました。
震災直後から、地域住民によるまちづくり協議会と神戸市が、一丸となって震災復興土地区画整理事業によるまちづくりに取り組み、十余年の歳月を経て、自治会や周辺地域とも協力しあいながら、この町の復興を成し得ることが出来ました。建立 2009年3月新長田駅北地区のまちづくり協議会 自治会
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