付近は神戸では人気の高い住宅地なのですが、斜面地で道路がきちんと整備されていないところに古くからの戸建て住宅が建ち並んでいて、防災など都市政策の面からはいくらか課題のありそうな地区です。
岡本南公園は、その地区でもやや奥まったところにあり、接している道路も小型車と人のすれ違いも難しいような細道だけで、この公園のことを知らない人は、まずたどり着けないような場所にあります。
なぜ、わざわざそんな場所を公園にしたのか。その理由は出入口のところに書いてあります。
■現地の案内板より
この岡本南公園は水上勉の小説「桜守」のモデルとなった桜の愛好家 笹部新太郎氏の邸宅跡を神戸市が買収して市民の憩いの場所に整備したものです
昭和56年3月 神戸市
笹部新太郎(1887~1978)は、大阪・堂島の資産家の家に生まれ東京帝大の法科を卒業しながらも、とくに定職にはつかず、91年におよぶ生涯を桜の研究と保護に費やした人物です。
一歩間違えれば奇人変人の類ですが、幸いにして多くの種の桜の保護に成果をあげ、彼が取り上げて残した野生種の桜は大阪造幣局、夙川桜堤、奈良公園、大阪城公園などに広がっています。
さて、その岡本南公園。笹部氏が丹精込めて育てた桜のほかに、公園整備後に植えられた桜も多くあって、面積は小さいながらも桜の名所となっています。
それならば桜の季節に訪ねればよいものを、近くに用事があった夏の盛りに訪れてしまいました。
しかし園内には水量の豊富な流れがあり、夏でも涼しげです。
園内の至るところが桜ばかりなのですが、一番目立つところには笹部氏が発見した新種の桜(ササベザクラ)が植わっています。邸宅だった頃からあったものは1998年(平成10年)に枯死し、現在のものは二代目だそうです。
もっとも、花が咲いていないと、どれがどれだかよくわかりませんが。
そのほかにも、オオシマザクラ、エドヒガンなど、野生種の桜が何本も植えられています。その多くは柵などで仕切られて足元までは人が入れないようになっており、大切に育てようという意思が感じられました。
また花の咲く時期に訪ねてみたいですが、きっとその頃は混み合って落ち着かないだろうとも思うと、夏は夏で良かった岡本南公園でした。
(2014年7月訪問)
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