宮古島市・平良の市街地の北に隣接して、荷川取(にかどり)地区があります。地区内の海の方には荷川取漁港があり、そちらにも公園があるのですが、荷川取公園は少しだけ内陸に入った川沿いの森と、川を挟む丘を使った公園です。
主要な道路から少し奥まったところにある荷川取公民館のさらに奥、かなりわかりにくい場所に中央入口があります。宮古島に住んでいても存在に気づいていない人が結構いるのではないかと心配になります。
中央入口を入ると左手に遠見台と多目的広場、右手に体験学習広場と自然観察広場、まっすぐ進むと川を渡って東側の広場があります。
まずは遠見台から公園内を眺めます。
こちらが多目的広場方向。森越しに平良港、荷川取漁港の海が見えています。
体験学習広場は、名前だけ聞くと農林業や昔の暮らしなどの模擬体験、五感を使いながらの自然学習などができるというイメージがありますが、ここではモニュメントを中心とした石敷きの広場で、各自自由に学習してくださいというシステムになっています。
ただ悩ましいのは、具体的にどのような体験学習ができるのかが、現地ではよく分からないのです。
広場の入口には「この場所は、円形広場を中心としたときの天空を表現しています。地球・星・宇宙についての学習広場です」とあり、確かに足元に星や星座の絵が彫られたレリーフが埋められているのですが、「体験学習」のイメージとは少し違う気がします。
モニュメントは中が望遠鏡ないしは潜望鏡のようになっていて、夜であれば北極星が見えるらしいのですが、昼間は何も見えません。
またモニュメントの木部は化石だということなのですが、宮古島で埋没林の化石が出るとも思いにくいので、島外から運んできたものだと思われます。
解説にはそうした理科的なことは書かれずに「あなたも、わたしも、おとうさんも、おかあさんも、すべての人が正しい方向(中心の柱)に向かいながら寄り添って生きていくのです」と道徳的なことが書かれています。
中心の柱は北極星に向かっていますので、正しい方向には北極星があり、すなわち北極星を宇宙全体を司る神として崇める「北辰信仰」を体験できるという理解でよいのでしょうか。
全体に「見たままに感じよ!」というアート系ないしは宗教系の姿勢でまとめられており、指導員がいない場合の体験学習の常套手段(例えば「セルフガイド」として案内者や指導者がいなくとも来園者が自分たちで色々な体験ができるような解説板、リーフレット等を提供するなど)とは少し異なる内容となっていました。
まぁ素直に感じられなかったのは、私の体験学習に対する姿勢がよろしくないのかも知れません。
体験学習広場からさらに進むと、自然観察広場があります。
名前は広場ですが、実際は丘陵尾根で、あまり平らなところはありません。
尾根を巻く園路を抜けると東屋があります。
眺めは良いのですが、目の前に宮古島名産の泡盛「菊之露」の工場があるので、自然観察は忘れてついつい飲みたくなってしまいます。
少し戻って、駐車場の周りには遊具広場があります。
といっても遊具は巨大シーサー滑り台とブランコくらいのこぢんまりとしたものです。
シーサーは、No.227の盛加越公園と同じものだと思います。
中央入口から正面に向かい、唐突にかわいい犬の絵(シーサーではないですよね?)などが描かれた園路を通っていくと、川を渡る大きな橋があります。
公園橋は「荷川取クイチャー橋梁」と名付けられています。クイチャーとは宮古島の伝統民謡・舞踊なのですが、これのイメージがどのように橋に反映されているのかは、余所者には計り知れぬところです。
●日本橋梁建設協会『虹橋』より 荷川取公園橋
発注者 :沖縄県平良市
形式 :中路式パイプトラスアーチ
橋長 :51.0m
幅員 :3.80m
鋼重 :86t
所在地 :沖縄県平良市荷川取地先
本橋は、平良市北部に新設される荷川取公園内の人道橋です。なめらかな曲線を描くアーチは宮古島の伝統舞踊「クイチャー」のイメージをモチーフとしているほか、横支材を大胆に省略することで開放感を持たせるなど、公園のシンボルとなるようデザインに工夫が凝らされています。
橋を渡ると、色々使えそうな芝生広場があります。広場内に車が止まっているのは、清掃作業の方のものです。
川の崖地には木製の橋詰デッキが設けられており、谷の方に少し下りられるようになっています。デッキには「野鳥の観察に、橋の鑑賞に」と使い道が説明されていますが、こんなに茂った森の中の野鳥を観察するのは結構たいへんです。
この川沿いの森の中に、第二次大戦中につくられた特攻艇の秘匿壕が多く残っているそうですが、この時はよく分かりませんでした。もう少し案内・解説板などがあれば良いと思います。
●広報みやこじま2013年6月号(No.93)より『ウプドゥマーリャ特攻艇秘匿壕群』
【場所】 平良字荷川取 ( 荷川取公園周辺他 )
【築造年月日】 1944( 昭和 19) 年
【築造者】 海上挺進基地第 4 大隊
【概要】荷川取漁港の斜面地一帯に、秘匿壕が造られました。この秘匿壕には、海上挺進第4戦隊が配備され、マルレ型の水上特攻艇が格納されていましたが、結果として出撃することはなかったようです。残念なことに秘匿壕の一部は、道路の建設工事などに伴い失われてしまいました。
市街地に近い上にまだ新しく、戦跡や川沿いの自然環境など宮古島の他の公園にはあまりない要素を持っていますので、宣伝や運営次第で人気の公園になれるのではないかと思いました。
(2013年3月訪問)
0 件のコメント:
コメントを投稿