西宮市西南部の海岸沿いに、国史跡の西宮砲台があります。
幕末の大阪湾沿岸警備のために建てられたもので、ほかにも近いところでは西宮市の今津、神戸市の湊川崎、和田岬、舞子などにも砲台があったようです(この中では和田岬と西宮に建築物が現存)。
この西宮砲台のある御前浜(おまえはま)は、阪神間にわずかに残る自然海岸ということになってはいますが、明治から昭和にかけて阪神電鉄のレクリエーション開発がおこなわれており、現在も100メートルほどの幅がある砂浜の陸に近いところでは音楽堂、マリンプール、風呂屋なんかが建てられました。以前は砲台も、砲台のある土地も阪神電鉄の所有で、砲台の建物を使ってビアガーデンまでやっていたそうです。
もっとも、古い空撮で見る限り水際線の埋立はおこなわれていないようなので、自然海岸であることは間違いないと思います。
そうした過去の公共的な土地利用の経過があるためか、現在もこの海岸一帯は西宮市による公園計画(御前浜公園)がありますが、現在のところほぼ未整備です。しかし砲台横のわずかなスペースが、その名も「砲台跡児童遊園」として整備されています(西宮市の公開資料によると、土地は阪神電鉄からの無償借地になっています)。
現在の御前浜は、近くに住む人たちにとって格好のオープンスペースとなっていますので、とくに公園としての施設整備がなくとも多くの人が利用しています。
しかし、どこかの時点で「近くには公園も少ないし、子どもの遊び場をぜひ...」という声があったのか、砲台のすぐ横にブランコ、シーソー、遊動円木(遊動木)が並んでいます。
海×砲台×遊具広場という光景は、かなり意外な組み合わせです。砲台はすぐ横に現存しているのに「砲台跡」と名乗ってしまっているのもよく分かりません。
ちなみに、この御前浜から埋立地の西宮浜(人工島)に渡るところに、御前浜橋という跳ね橋があります。れっきとした市道(歩行者・自転車用)なのですが、物珍しいので子供たちが楽しそうに眺めています。
海辺×跳ね橋というのも、けっこう意外な組み合わせだと思います。
なにかと意外な砲台跡児童遊園でした。
(2012年5月訪問)
2013年7月に訪問したところ、3つあった遊具のうち遊動木は撤去されていました。事故発生率の高い遊具ということで全国的に撤去が進んでいますので、その流れの中で撤去されたものと思われます。
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