神戸港にあるポートアイランドは、1966年から1981年まで15年かけて第1期の埋立とまちづくりが行なわれた人工島都市です。海沿いはコンテナ船の岸壁が続きますが、島の中央は住宅や商業地になっており、そこにポートアイランド北・中・南の3つの公園が配置されています。
このうちのポートアイランド南公園は、もともとは島の南端だったのですが、南沖合に向けて2期区域が新たに埋め立てられたため、現在は島の中央あたりになってしまっています。少しわかりにくいですが、道路を挟んで右手の緑がもともとの南公園本体、左手の少し高くなっているところが拡大地です。
ポートアイランドの住宅地内には、歩行帯幅6~12メートル、緑地帯幅ではその倍、延長は1km以上ある幹線遊歩道が通っており、それの南の終点が南公園に接続しています。
遊歩道と南公園本体との接合部には、大きなスクリュープロペラが中央に置かれた噴水があります。プロペラはコンテナ船で実際に使われていたものだそうです。
■現地の解説板より「スクリュープロペラの説明」このスクリュープロペラは、フルコンテナ船あめりか丸(大阪商船三井船舶株式会社)に装備されていたものです。あめりか丸は昭和43年10月に建造され神戸港から北米航路に就航して活躍した最初のフルコンテナ船です。(中略)あめりか丸が最高速力で航海する時、このスクリュープロペラは1分間当り108回転し26.38ノット(時速約49キロメートル)という高速力で走ります。神戸市
プロペラは周りから水をかけられるばかりで、自分が回ったり水を吹き出したりすることはないのですが、水辺にあるというだけでなんとなくかつての役回りを思い出させてくれます。
プロペラはさておき、園内には「平和のモニュメント群」とでも言うべき謎のモニュメントがいくつか置かれています。
現地では設置経緯や目的などがよくわからなかったので、神戸市のHPを見てみると特集ページがあったのですが、そこにも芸術的かつ理念的でよくわからないことが書かれていました。わからないままに色々書くこともできないので、本記事ではパス。気になる方は調べてみてください。
南公園本体は、中央部に野球場、それを囲むように芝生広場と照葉樹中心の林、北端に数年前にリニューアルで作られたドッグランという構成になっています。
芝生広場については、2ヵ所に分かれており、それぞれがさほど広くないのが残念です。もう少しまとまった広さがあれば、もっと使い勝手が良かったのにと思います。
ただまぁ、どちらにしてもそれほど利用者が多くないのでしょう、訪れた時は芝生というよりは草むらになっていました。
その草むらに建つコンクリート柱はモニュメントではなく、屋根がなくなったパーゴラの残骸でしょう。これが1つではなく何ヵ所かあって、いささか寂れた感じを漂わせてきます。
屋根はなくなってもフジは残り、行く先がないので柱に絡みついているものもありました。
これはこれで、生命力を表すモニュメントのようです。
人工島で自然がないところに樹を植えたので、できるだけのびのびと育てたいという気持ちもあるのでしょうが、快適な公園とするには、もう少し林の手入れをして欲しいところです。
そしてドッグラン。利用登録料金だけで使える無料のもので、大型犬用と小型犬用が分かれています。
でもポートアイランドには集合住宅ばかりで庭付き戸建てはないので、大型犬は島外からやってくるのでしょうか。いや、最近は大型犬でも室内飼いが多いのかな。
そして南公園本体から高架の遊歩道でさらに南に進んだところにも、本体と同じくらいの面積がある公園が整備されています。正式にはポートアイランド中央緑地という別施設のようなのですが、繋がっているのでひとまとめに記事にします。
こちらはポートアイランド医療地区の一角を占めており、隣接地に中央市民病院、兵庫県立こども病院、神戸大学附属病院などが建ち並びます。それらの利用者のための大きな立体駐車場の屋上を公園として、落ち着いた憩いの場として整備されています。
単なる噴水のように見えますが、じつはこれも平和の泉というモニュメントであるようです。もっとも見るだけのモニュメントではなく、多少ゴツゴツしていますが、中に入って遊ぶこともできます。
いわゆる噴水とミスト装置とが組み合わされており、太陽が出ていれば、たいてい虹が見られるようになっています。
噴水とは別に、自然風に整備された池、せせらぎなどもあります。
せせらぎには子供がちょっと入るくらいのことはできますが、どちらかと言えば生物生息場として色が強い整備ですので、上の噴水と使い分けられるようになっています。
池とせせらぎは、ポートアイランド内にある下水処理場からの処理水を流しているようです。人工島の中は、どうしても環境のバリエーションが不足しがちですから、非常によい整備だと思います。
地下に施設が入っている屋上公園では、地下施設のための換気塔や通風孔が目立ってしまいがちで、それをどうデザインするのか、見せるのか隠すのか、といったあたりがデザイナーの迷いどころなのですが、ここでは思いっきり目立つように帆の形に仕上げ、周りに座れるようにしたり、角石をずらっと並べてみたりしています。
とくに遊具のない公園なので、子供たちはこの石に上ったり下りたりして遊んでいました。
換気塔の周りに限らず、広い範囲がきれいな草芝敷きになっており、非常にスッキリとした爽やかな印象があります。
南公園本体よりもこちらの方が新しく、その分、管理のことも考えた整備がされていることなのでしょう。
なんといっても、ここは小児科専門の県立こども病院と直結しているので、入院・通院している子供たちのためにも、あまり騒々しくならず、心が安らぐような場所として管理することが大切です。
そういう視点では、大きすぎない噴水モニュメント、小さいながらも変化のあるビオトープなども良い仕上がりになっていると思います。
新旧二つの顔を持つポートアイランド南公園でした。
(2022年6月訪問)
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